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ジオン独立戦争記〜名もなき兵士たちの転戦記
1.エルネスト・ルツ中佐編
第2話:グラナダ降下作戦
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宇宙世紀0079年1月2日。
公国軍は訓練の名目でそのほぼ全軍がサイド3を発し、
地球連邦との開戦に備えていた。
本国軍はサイド1へ、宇宙攻撃軍はサイド4へ。
そしてルツも所属する突撃機動軍は月のグラナダへ。
先制攻撃に向けた準備は完了していた。

旗艦エグモントをはじめとするルーゲンス艦隊は、突撃機動軍に属する
他の艦隊と同じくグラナダ降下作戦に向けて配置についていた。
ムサイ級軽巡コリオランの艦内でも公国軍創設以来の実戦を目前に控え、
ピリピリとした空気に満ちていた。

ルツ中尉もその例にもれず、格納庫に置かれている愛機の前に佇み
じっとその無骨な姿を眺めていた。

「中尉、どうされたんですか?」

ルツが声につられて振り返ると、機付の整備士であるシェンク伍長が立っていた。

「ちと、落ち着かなくてね」

ルツは緊張した面持ちのまま愛機の頭部へと目を移す。

「中尉でもですか?」

ルツの言葉を意外に思ったシェンクがルツの隣に並んで同じようにザクの丸い
頭部を見上げる。

「当り前だ。 俺だけじゃねえ。 誰にとっても実戦は初めてなんだ。
 しかも相手はあの連邦軍だぞ。 緊張するに決まってんだろ」

変わらず愛機を見上げながら、ルツはシェンクの癖っ毛をかきまわした。

「ちょっ、いい加減それやめてくださいよぅ」

シェンクはルツの行為に迷惑そうにしつつも、その顔には笑みが浮かんでいた。
しばらくしてルツの手が止まると、シェンクはその乱れた髪を手で整え
ルツの方に向き直って姿勢を正した。

「ルツ中尉の操縦されるザクを落とせるようなパイロットが
 連邦にいるはずがありません」

真剣な声色で言うシェンクに向かって、ルツは苦笑を浮かべた顔を向ける。

「そう言ってくれるのはありがたいし、そうありたいとは思うけど
 連邦を甘く見るつもりはねえよ。 こんな歳で死にたくないからな」

今度はシェンクの頭をポンと軽く叩くと、再度ザクに目を向けた。

「ところで、俺の命を預ける相棒の整備は完ぺきかな?
 今朝の演習ではちょっと焦ったけど」

開戦前最後でもあるこの日の朝に行われた演習で、ルツのザクはAMBACの
異常で姿勢制御に支障が出てしまい、途中で艦に戻るハメになっていた。

ルツの問いかけに対してシェンクは自信ありげに頷いて見せる。

「はい。AMBACのシステム異常の原因は右ひじ関節部にある緊急用バルブが
 誤作動を起こしてしまい、右腕のひじ関節から先が動かなくなってしまった
 ためでした。
 既にそのバルブは新品と交換してますし、問題なく作動することは確認済みです」

AMBACとはモビルスーツの姿勢制御システムのことで、四肢の運動に
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