#9『ミラフィ』
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術…特に結界…に優れた数十人、さらにその中でもえりすぐりの能力を持った11人だけで構築されている。全員がトップクラスの強度の防御魔術や
結界を保有しており、その防御は、恐らく騎士団として破格の力を持つ第一師団・第四師団の総勢を以てしても崩すことは難しいだろう。
なぜ防御能力にたけた人物を集めているのか――――それは、彼らを率いる《七星司祭》第四席の能力に理由があった。
《教会》支部の大庭の中央。第七師団に円形に囲まれて、その青年は、優雅に絵を描いていた。人目にして一級品と分かるキャンバスに、スラスラと描かれていく風景画。それは、今青年の周囲を取り巻く光景によく似ていた―――というより、それそのものであった。
ショートカットにされた、艶やかな銀色の髪。憂いを讃えて揺れる薄い紫苑の瞳を細めた表情は、整った少女めいた顔立ちもあって非常に儚げな印象を与える。だが、その左頬には、ひときわ目を引く奇妙な模様が浮き上がり、光を放っていた。
時計の形を模したそれは、現代魔術の象徴、《刻印》である。
青年の名は《七星司祭》第四席、《時を描く者》ミラフィ・ルースラビット。元は画家であったが、その生来の能力故に、その未来を失った男。
ミラフィは無表情に、無感動に、キャンバス上の風景画に手を入れていく。書き込まれるのは、《教会》に反旗を翻す反逆者たちが、大地にその血をばらまいて倒れ伏す姿。あくまでも精巧に、緻密に、書き上げられていく惨劇の光景。だがそれとは対照的に、反逆者たちに破壊された町の建物たちは、以前よりより一層壮麗に描き直されていた。
そしてミラフィがそのキャンバスから一歩下がり、左頬の《刻印》に魔力を流し込んだ瞬間――――世界が、一瞬で姿を変えた。
反乱に参加していた人々が、次々にその身体から血を吹き出させて、地面に倒れ込む。その身体はピクリとも動かない。即死している。それだけではない。ミラフィの描いた通りに、破壊された街並みが再生――――と言うよりは、生まれ変わっていく。
現象が全て収まった時、ランクD箱舟、《ディア・ラケル》の風景は、ミラフィの描いた通りに創り替えられていた。
これこそが、ミラフィ・ルースラビットのもつ特殊能力。彼が《七星司祭》の一角たる所以にして、第七師団が防御魔術に特化した存在であることの理由。そして、彼がなぜ画家生命を絶たれることになったのか、その起源。
彼のもつ《刻印》、《時計》の能力は、描かれた風景を現実のものに創り替える能力。いわば、『未来の作成』であった。作品を可能な限り緻密に、正確に作り上げることで、その効果は増していく。ミラフィが時間をかけて絵を描いて行ったのには、そう言った理由が存
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