2ndA‘s編
第十一話〜在り方〜
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事はできない」
力強い断言。
彼女の―――正確には夜天の魔導書についての知識を持つ人間が居れば、重く受け取るであろうその言葉をライは受け流す。
それがどうした、と。
「関係ない。過去がどうであれ、それは既に知識であり経験である。それは確かに『今』を構成する為の要素だ。でもそれを言い訳にするのは間違っている」
「経験したからこそ、その結末を知るからこそ、破壊を生み出すことが止められないからこそ、今自らができる主の願いを叶えるという最善をなしているのではないか!」
それは既に慟哭であった。
幾度も経験した終焉を超えても、擦り切れる事ができなかった彼女の感情の発露である。
彼女は覚えている。幾度も求めた救いを。
彼女は知っている。自らの存在が消してしまった命を。
彼女は見てきた。自分という存在が狂わせてしまった主たちを。
そして彼女は願った。闇を振り払う光を、と。
「違うな、間違っているぞ」
その光は告げる。
自らも闇を抱えるからこそ。
背負ってきた命があるからこそ。
彼女の言葉を否定する。
「願いというのは自らの在り方だ。他人の願いを言い訳に使うのは自分を偽っているだけだ。そんなモノは最善ではない、ただの依存だ」
彼女の表情は“苛立ち”から“困惑”に変わる。まだ、変えることができる。
「君の本当の願いはなんだ?過去も罪も関係ない。今ここにいる君の望みはなんだ?」
「……っ、私は……」
彼女の瞳から感情が溢れる。それは涙という形をなして、彼女の感情を表現する。
「わた、しは…………」
どれだけ身勝手でも、どれだけ非難されようとも、願うことは間違いでないとライは知っている。それがなければ、自分が自分である意味が無くなってしまうのだから。
「私は!」
彼女の言葉に力が宿る。
そこには、懺悔も罪の意識も後悔も含まれない。子供のようにただ純粋な想いが込められる。
「生き……たい…………生きていたいっ……」
そっと呟かれるように絞り出された言葉。泣きながらの発音の為、それはお世辞にも綺麗な台詞とは言い難いものかもしれない。しかし、その言葉はライにとってどんな詩よりも綺麗と感じることができた。
「その<願い/ギアス>確かに受け取った」
その誓いの言葉が彼女の耳に届く。それは彼女がこれまで経験した根拠のない自信に溢れたものに聞こえたかもしれない。だが、その言葉を信じたいと思う彼女は確かにそこに存在した。
彼女は感謝と願いの意を込めて笑顔を贈ろうとした。それが泣き笑いであったとしても、それがどんなに歪な笑顔であっても、目の前の光は自分を照らしてくれると信じて。
しかし、彼女が笑顔を浮かべようとする前
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