2ndA‘s編
第十一話〜在り方〜
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言葉を吐き出す。それと一緒に展開したままのデバイスであるS2Uをリンディに差し出した。
「とにかく今はアースラに戻ってこれからの事を検討、実行を行います。異論は?」
「ありません。座標データはデバイスの中に」
簡素なやり取りの後、再びその裏路地には青緑色の光が瞬いた。
海鳴市・とあるビルの屋上
(肉体の損傷度一割二分……蒐集の強制中断が原因か)
ビルの屋上に吹く風は、冬という事で生身の顔の部分を撫でると言うよりは切りつけてくる。そして地形的に海が近くにある為にその風には磯の香りが含まれ、海辺の波を連想させる。
(チューニングシステムの最大稼働時間は十八秒、それ以上は負担が大きすぎてAI自体にダメージが起きるか)
風に吹かれる中、ビルの屋上に立っているライは気軽にビルの淵に寄るように歩く。その姿は本当に散歩をするような様子で、危機感というものを全く感じさせない。
(…………ダメだな、どうしても意識が荒事中心になってしまう。浅慮且つ短慮だ)
淵までたどり着くと同時に、ライの体全体が一瞬光に包まれる。すぐさま光が収まるとそこにはバリアジャケットではなく、私服にコートを着た当人の姿が見えてきた。
一旦バリアジャケットを解いたライは、それこそ友人に挨拶をするような気軽さで口を開いた。
「やあ、現実の世界では初めまして」
「……」
内心、気障ったらしい言葉だと苦笑し、緊張が解けそうになる表情筋を引き結ぶライの表情は少しだけ歪になってしまっていた。
ライの視界の先には、夢の中で会った時と違いバリアジャケットを纏い、黒翼を生やした夜天の書の管制人格がいた。更にその横には複数の蛇が絡みつき、球状になっている夜天の書があるのだがライの視線はあくまで管制人格の方に向いている。
先程まで驚きの表情を見せていた管制人格も、今はどこか冷めた目でライを見ている。彼女のその目を“知っている”ライは、内心で少しムッとしながらも彼女を見つめる。お互いに見つめ合う形になる二人。そこにどんな意味があったのかは、当人たちにしか分からないが、先に沈黙を破ることになったのは、意外にも彼女の方であった。
「何故、お前が?」
「先ほど言った事が全部。それ以上の理由も、思惑も、目的も今の僕には無い」
刺すような寒さの中で、本人も驚く程滑らかに言葉が口から出て行く。これまで複雑に考えていたのが馬鹿らしく感じるほど、それが自分の本音であるとライ自身再確認できるセリフであった。
ノータイムで返された言葉に、管制人格が示した反応は驚きでも、喜びでもない。そこに浮かんでいたのは、明確な――――『苛立ち』である。
「お前が普通の魔導師ではない事は知っている。だが、それだけで私を救う
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