第六幕その八
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「胃もな」
「そうそう、胃潰瘍でしたね」
加藤さんは長老さんにそのことを言いました。
「あの人は」
「それでお亡くなりになられてるな」
「結果として」
「そうじゃったな、あと咳もしておられた」
「結核ですね」
「そうした気もあったわ」
夏目漱石も苦しんでいたのです、お身体のことで。
「だからわしも金之助さんに温泉を勧めたのじゃ」
「そうだったのですか」
「温泉はよいものじゃ」
この道後温泉にしても、というのです。
「入っておると身体も癒してくれる」
「心を癒すだけでなく」
「そうじゃ、じゃからな」
それでだと言う長老さんでした。
「金之助さんにもかなり勧めたし」
「今もですね」
「うむ、先生にもな」
今度は先生を見てのお言葉でした。
「ここでお話しようと思ってな」
「リラックスしてお話が出来るからこそ」
「そうじゃ、それ故にじゃ」
まさにそうだというのです。
「ここにしたのじゃよ」
「成程」
「それに加藤さんはどうやら」
その加藤さんにくすりと笑って応えてのお言葉でした。
「近頃腰が悪くないかのう」
「はい、実は」
「疲れが溜まっておるな」
腰に、というのです。
「そのままだとよくない」
「だからですか」
「温泉で癒すのじゃ」
「こうして入ってですね」
「後は肩もじゃな」
「実は肩こりも酷くて」
「忙しいから疲れが溜まっておるのじゃ」
腰にも肩にもというのです。
「だからな」
「ここはですね」
「今日だけでなく時々こうしてな」
「この温泉に入って」
「うむ、癒すべきじゃ」
是非にという感じでのお言葉でした。
「酷くなってからでは駄目じゃ」
「そうですね、それでは」
「忙しくとも温泉に入る時間はあろう」
「それ位は」
「それならじゃ」
温泉に入るべきだというのです。
「そうされよ」
「それでは」
「折角松山に生まれ育っておるのじゃ」
道後温泉のあるこの街にです、それならばというのが長老さんの加藤さんに対するお言葉です。
「それならな」
「道後温泉に入り」
「そして疲れを癒されよ」
「温泉は観光客だけのものではないですね」
「皆のものじゃよ、実際にわし等もな」
狸さん達もというのです。
「こうして入っておるしのう」
「だからですね」
「加藤さんもじゃ」
「ここにこうして入って」
「疲れを癒すことじゃ。わしも数百年この温泉に入っておるが」
どうかといいますと。
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