第六幕その七
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「本気で化かす相手はな」
「悪人ですか」
「そうじゃ、そうした相手だけじゃ」
「何となくそれがわかりましたので」
「わし等には警戒しておらぬか
「目、ですね」
先生は長老さんのそこも見ていました。
「目を見ればです」
「相手がわかるか」
「昔からそう言いますよね」
「悪人の目は濁っておる」
長老さんはこのことを指摘しました。
「どうにもならぬ位にな」
「ヤクザ屋さんとかね」
「そのマフィアとかね」
「もう悪いことする奴の目って違うよね」
「凄く濁ってたり嫌な光出してたりしてね」
「そこがもう違うんだよね」
「目がね」
狸さん達も嫌そうに次々と言います。
「善人と悪人だとね」
「違うんだよね」
「目には生き方が出るものじゃ」
「はい、ですから」
それでだとです、先生も言うのでした。
「長老さん達が悪人ではないとわかりました」
「目は本当に大事じゃ」
長老さんのお言葉はしみじみとしたものになっていました。
「とはいっても見えぬ者が悪いとはならぬがな」
「盲目の人は、ですね」
「目に光がなくともじゃ」
「それが悪とはなりませんね」
「身体に傷があっても悪いことではない」
このことは決して、というのです。
「それで人もわし等も決まらぬ」
「確かに」
「目は大事なものじゃがな」
「それで全てが決まるものでもありませんね」
「決してな」
「僕もそう思います」
「全くじゃな、では真面目な話は止めてじゃ」
丁度頃合と見てのお言葉です。
「今からはな」
「本格的に飲もう」
「そして楽しもう、先生も」
「加藤さんも皆もね」
動物達もというのです。
「飲んで食べてお風呂に入って」
「そうしてね」
「遠慮はいらんぞ」
長老さんは加藤さんに一杯勧めながら言いました。
「加藤さんもどんどんやって下され」
「あっ、すいません」
「どんどん飲んでな」
「そして温泉もですね」
「楽しんで下され」
是非にという口調でのお言葉でした。
「折角の温泉じゃからな」
「有り難うございます」
「ここはな」
長老さんも飲みながらです、しみじみとして述べたのでした。今お話することはどういったことかといいますと。
「金之助さんとも入ったわ」
「夏目漱石さんですね」
「わしにとっては金之助さんなのじゃ」
漱石ではなく、というのです。
「あの人とも結構遊んだぞ」
「長老さんとあの人はお友達だったんですか」
「そうじゃ、よく高尚な印象があるが」
「違ったみたいですね」
「結構あれで癇癪持ちでおっちょこちょいじゃった」
それが夏目漱石だったというのです。
「中々大変なところもあった」
「そうした人だったのですね」
「案外気が弱くてなあ」
長老
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