第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Afternoon:『Predator』U
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見た、見てしまった。背後、青白い粘液を撒き散らしながら吠える猟犬──見た目には、犬の要素などは四足である事以外にはない、怪異を。
悪意に満ちたその顔容、いっそ雄々しく吠えればまだマシだろうが、断末魔のような金切り声のみ。
『Gruuuuuuuuu!』
「───────っ!」
開け放たれた顎から乱杭歯が剥き出される。同時に、注射器の如き触手じみた舌と共に刺激臭混じりの吐息と唾液らしき腐汁が撒き散らされた。間近での事、避けようもない。
ただ、分かる事は一つ。早く、逃げ出さなくてはいけないという事だけ。
(集中、集中────!)
嫌悪と恐怖の相乗により集中を切らして空間移動を封じられ、最早、黒子は悲鳴すら出せない。
そもそも空間移動能力者にとって、集中力は欠かせない才能。そんな事は、他ならぬ黒子が一番知っている。
(────なんで……無理ですの!)
だから、恐怖に竦む心に鞭打ち、無理にでも集中して猟犬を転移させて逃れようとして────それが出来ない事に愕然と、慄然と。
彼女の能力の通じない、悪夢その物の相手を前に……心が折れてしまうのも、無理はない話。
「いや……イヤですの、離してくださいまし!」
それを、この作られた怪物は削り抉る。何故ならば、この怪物は人が生理的な嫌悪を抱くように作られた怪物だから。
子供のように──否、真実まだ、中学生の子供。年齢相応に喚き、暴れ出す。
『Gruaaaaaaaaaa!』
「イヤ、いやぁぁぁぁぁっ!?」
そんな彼女──哀れな獲物を組み敷いて、勝ち誇るように猟犬は鋭利な舌先を向けて。
「化物が……人の後輩に訳分かんねェ汁引っ掛けてンじゃねェよ──────!」
繰り出された偃月刀の横薙ぎの一撃。貪り喰う、副魔王の欠片。祭具にして鍵。
それを予め予期していたように、猟犬は『路面の割れ目に吸い込まれる』かのように消えた。
「消えた──空間移動能力持ちか、面倒くせェな!」
舌打ち、周囲の空間を探る。反応は────真横から、空間を歪ませながら『何か』が迫ってくる!
「クソッタレ────!」
「っあ────!」
身を捻り、回避する。黒子を掻き抱くように引き連れ、横っ飛びに転がって。
刹那、自らの質量に耐え切れず空間が潰れる。一点に集束し、事象の地平線の彼方へと。
「また、躱したか……流石、主将」
拾った小石三つを右手でジャグリングしながら、古都は酷薄に笑う。先程の時のように、投げた小石をブラックホールと化したのか。
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