第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Afternoon:『Predator』U
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収斂する気配。先程までとは訳が違う、橋脚一つがひしゃげていく。
──そうだな……確かに。普通なら、もう駄目だ。そういう能力か魔術を使えでもしなきゃ、諦めるしかない。
諦めを告げる思考に、そうだね、と純銀が蒼い星雲の目を伏せる。当然だ、と影が燃え盛る三つの瞳を滾らせて嘲笑う。
「大丈夫だ────」
しかし、身体を……口を衝いたのは正反対の衝動。痺れるような、引き攣れるような不随意の運動をする身体を無理矢理に押さえ付けて。
──そうだ、俺は誓った。俺は、護ると誓ったものは、何一つ諦めない!
いつかとは違い、左腕でより強く黒子を抱き締めて。いつかと同じく、『護りたいもの』を庇い立つ。
「大丈夫────俺が御坂に会わせて見せる、必ず……だから!」
「……先輩……」
頼りにされていないのは空しいが、だとしたら何だと言うのか。同じだ、自分以外が寄る辺でも関係ない。護ると、勝手に決めたのは、此方だ。
だからもう、意地とハッタリだけで笑みながら。消化酵素に蝕まれ、青白い筋の浮いた右腕を伸ばす。
『「小賢しい────だが! 無駄だ! 摸倣しただけの、貴様の偽物の“影の鎧”では! 否、例え本物でも、この一撃は防げまい!』」
古都──最早、蘇峰古都なのか『妖蛆の秘密』なのか、境界すら曖昧となり始めた存在が哄笑する。
既に、呑み込んだ質量は橋脚どころか路面も含めた数十トン。そして、今まで見えもしなかったマイクロブラックホールが────針穴ほど、虚空に浮かんでいる。
『「終 わ り だ ! 諦 め ろ !』」
『Gruaaaaaaaaaa!』
勝ち誇り、喚きながら。針穴もの大きさの潰星を投擲する。更に、右側の橋脚の鋭角から飛び出してきたティンダロスの猟犬。
光すら逃げ出せない漆黒の地平線と、時空の果てまで獲物を諦めない猟犬。黒子の空間移動を試さずとも、躱せるべくもない。彼女もそれに気付いている、だから、目を背けて。
「前を……向け! 風紀委員、白井黒子!」
「っ……風紀────委員……!」
叱咤に、目を前へ。ホンの僅か、風紀委員としての矜持が、恐怖を打ち破って。
その瞳が見たモノ、変わり行くモノ。『賢人バルザイの偃月刀』と一体化した禍々しい刃金、右腕に。沸き立つ禍々しい奇怪にも機械に似る、確固たる密集した鎧にも群を為した剣にも、唯一生まれ持った拳にも見える追加された複合装甲を纏う、右腕の鉤爪の拳へ。
ただ、迷い無く前へと向けられた、嚆矢の右腕────!
──掴める、この腕なら
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