第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第三節 蠢動 第五話 (通算第55話)
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茫然と愛機を見送るエマに、気遣ってその背にブライトが近づく。覗き込んだブライトが見たのは、エマの険しい表情だった。愛機を失った悲しみとか、見送るしかない茫然自失の体ではなく、戦場に際した戦士の緊張感に溢れ、一点を凝視している。エマの瞳に写るもの――それは接近しつつある《リックディアス》だった。
「赤い《スカートつき》だと?まさか――中尉、急ぐぞ!」
エマの視線の先に気づくや否や、ジープへ駆け出す。こういう時のブライトは早い。
戦場以外では――特に政争に関わりそうな場合は、惚けて言い逃れられる様に構えておくことが大事だからだ。軍の内部に網を張りたいところだが、上層部に睨まれていては思うように動けていないのが実情でだった。
ニュータイプ部隊の艦長代理――この肩書きは消えることなくブライトに付きまとっていた。彼自身はニュータイプではない。たまたま、ニュータイプとして開花したアムロ・レイと共に一年戦争を生き抜いてきただけで、この扱いである。本人の扱いは如何ばかりか。アムロにはミライとの結婚式以来会っていない。軍の社会復帰プランを利用して大学に行ったあと、再び軍に戻ったと風の噂で耳にしただけで、会うことはできなかった。他のメンバーにはかろうじて会えることから、『ニュータイプを恐れた軍首脳部に監禁されているのではないか?』とジャーナリストになったカイ・シ・デンは言っていた。勿論、確証はない。ブライト自身も様々な伝手を辿ってみたが、皆目行方が分からなくなっていた。予備役入りして、戦争博物館の館長を勤めるハヤト・コバヤシから、最近になって北米に軟禁されているらしいと報された。
「ブライト中佐!」
エマがブライトを追う。
ブライトは、停めておいたジープの後部シートに飛び乗ると、追い掛けてきたエマにハンドルを委ねた。エマは無言で《リックディアス》の降り立った中庭の方へ向かう。やはり、普通のティターンズではないとブライトは感心した。
だが、実際のところ、MS相手では生身の人間でどうこう出来るものではない。しかし、どちらの事態も味方のMSの連携が必要である。このままではMSは各個撃破されてしまい、こちらに打つ手は無くなってしまう。既にMSが数機撃墜されているのだ。
機動艦隊もさすがに本拠のコロニーを傷つけ、民間人を犠牲にしてまでとは考えないだろう。そうなれば、敵の脱出ルートを想定したポイントに先回りして叩くしかない。
「スカートつき――ですか?」
エマにとっては耳馴れない言葉だった。それもその筈で《スカートつき》とは、一年戦争中に連邦の兵士が渾名した《ドム》のことである。ブライトは見たままを言ったに過ぎないが、アナハイム・エレクトロニクス社の努力は報われていない。幾ら擬装を施しても設計思想からくる全体のシルエットで開発経路は推測できる。擬装で
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