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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第三節 蠢動 第五話 (通算第55話)
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は設計が変わる訳ではないから、致し方のない部分だった。
「……そうか、中尉は戦後組だったな」
 急に自分が老けた気がしたブライトだったが、ブライトとて若い部類である。最年少ではないものの、中佐としては数少ない二十代である。手短に《ドム》の説明をエマにしながら、《リックディアス》のパーソナルカラーに引っ掛かるものがあった。
 ジオンにも連邦にもMSの部隊カラーは当然存在する。兵器や兵士の発見性を下げたり、部隊の識別や部隊の士気を鼓舞するために行われたものだ。さらにジオン公国軍では、功績を讃えて個人レベルでの機体カラーを勲章がわりに許した。勿論、登録制であり、勝手に変えられるものではない。公国軍残党もその伝統を踏襲している。
 部隊カラーでないのは不揃いなカラーリングから明白であり、赤い《リックディアス》はシャアのパーソナルカラーに酷似――いや、そのままと言っていい。右肩に描かれたエンブレムが違うだけだ。少なくとも何らかの形でジオン――公国軍の残党か共和国軍かは不明だが――が関わっているとしか思えなかった。エゥーゴの主張はエレズムが元であるが故にジオンとも結託し得ることは理解できるが、何か違う意思が介在している気がしてならなかった。
「《赤い彗星》……シャア・アズナブル共和国軍准将ですか?彼は現在、ジオン共和国で首都防衛の任に就いているはずでは?」
「そのはずなんだが……」
 エマの言う通りだった。
 外国であるジオン共和国であっても、国民的英雄であるが故、にシャアの行動は連邦政府も把握している。ティターンズでは潜在的な敵を糾合しうる存在としてマークしていた。この件に関して、ジオン共和国の民主党親邦派議員が便宜を図ってくれている。
 ブライトも確信がある訳ではない。だが、どうしても気になるのだ。自分でも考え過ぎだと思わなくもない。しかし、戦場ではその直感にも似た気配を感じることが生き残る最善の手段であることを理解していた。
 所属不明機が難敵であるという確信。
 事態はブライトの予想と権限を軽く飛び越えてくれた。貧乏籤というものがあるなら、破り捨てたい所だ。
「あいつらっ!」
 ブライトの怒声にエマがジープのスピードを上げた。もう一機、《リックディアス》が降り立ったのだ。《ガンダム》を捕獲しようとしていることは明らかだった。エマとしても愛機を奪われた上に、為す術無しでは、正規パイロットの誇りが赦さなかった。
 強引に《ガンダム》と《リックディアス》の間にジープを割り込ませようと、エマはアクセルを踏んだ。
「エマ中尉、よせっ!」
 ブライトの声にハンドルを切って応えた。寸でのところで急ブレーキを踏んだジープは停車する。ブライトが制止したのには理由があった。新たに味方――もう一機の《ガンダム》が現れたからだった。
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