第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第三節 蠢動 第二話 (通算第52話)
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間に合う訳がない。第一、母艦が近いならともかく、ドッキング・ベイまで墜落した試作機を放り出して愛機を取りに行けば、片道十五分は優に掛かる。それでは、善処していることにならない。
ブライトは最早、係り煩うだけ時間の無駄だと判断した。
「勝手にしろっ」
ブライトはジェリドを無視した。敵が来るまでに、《ガンダム》だけでも回収したかった。幸いなことに演習中の《ジムU》が足止めに向かっている。撤去作業車も現場に着いていた。
撤去作業の指揮を始めたブライトにエマが所在無げに具申する。
「ブライト中佐、自分の《ガンダム》が格納庫にありますので、出動します!」
「補給は終わっているのか?」
試作機は演習後メンテナンスする。演習事態がテストであり、データをバックアップし、量産型にフィードバックするためだ。普通であれば、補給はしていない。だが、エマにはメンテナンスに入る前にジェリドが墜落させられたと思えた。自分が帰投してから警報が鳴るまで時間がなかったからだ。補給はされていないにしても、牽制のためでも出撃することは可能なはずである。
「まだ、動きます!」
エマはブライトの返事を待たずに格納庫に走り出した。ブライトはエマに好感を持っていたが、今のエマの態度はやはりティターンズなのだとブライトに感じさせた。だが、自分で考え動くことは悪くない。ジェリドの行為とエマの行動は違う意味を持つ。それが解らぬブライトではない。
しかし、勝手に動かさせる訳にもいかない。命令権はないが、ブライトの責任感である。ティターンズに頭ごなしに命令すれば後が恐いと誰も近づこうとしない。だが、多くの一般将校がいるなかで誰かが責任を負わねばならぬなら、ブライトに迷いはない。相手がバスクともなれば話は別だが、基地司令が不在で、司令代理が負傷しているとなれば、指揮する者はいないのである。
「待ちなさい、エマ中尉!」
ブライトもティターンズだけの基地であれば口を挟まなかったろう。だが、ここには一般将校がいる。後方基地の駐屯所であり、ティターンズに演習場として間借りされていることもあり、常勤している者は多くはない。とくに、演習中であったため庁舎に残っていたのは憲兵が多かった。そもそも、ティターンズは歪な組織構成をしている。士官が多く、兵卒が少ないのだ。連邦軍を指揮下に置いて行動する特務編成が常態化しており、MSと艦隊に偏っている。陸戦隊は連邦軍から徴発し、拠点防衛も連邦軍に任せ、兵站も連邦軍のルートを優先で使っている。攻撃部隊しかいない軍隊など独立編成の軍にはありえない。徐々に連邦軍を指揮下に収めて肥え太っていた。
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