第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第三節 蠢動 第一話 (通算第51話)
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「うっ……」
ジェリドは落下の衝撃で、強かに身体を打ち、短い間気を失っていた。鈍い痛みに起こされたが、自分が何処にいるのか思い出すまでに暫しの時間を要した。
節々が痛むが大きな怪我はない。パイロットの本能が機体をチェックさせた。モニターに何も映っていないがコンソールは生きている。メインカメラがやられても複数あるサブの一つぐらいは生きていても良さそうなものだが反応はなかった。とりあえずシステムを再起動させると、セルフチェックが始まる。セルフチェックには数分掛かるが、身動きできない以上、他にすることはなかった。
通信にノイズが入っているが、通信機は生きている。無線封鎖されているのは戦闘が継続しているのだろう。ジェネレータも問題ないし、機体に大きな破損箇所もない。だが、外の状況が解らぬ以上、無闇に機体を動かす訳にはいかなかった。
徐々に意識がしっかりしてくると、いいように玩ばれた憤りが込み上げてくる。ジェリドは自分に落ち度があったとは考えなかった。
機体が愛機であったなら。
演習中でなく、実戦装備だったら。
もっと訓練時間が十全だったら。
戦場ではそんな言い訳が通用するはずもない。だが、ジェリドは自分を信じられなくなったら終わりだと考えていた。戦場になると判っていたら《ガンダム》の演習などしてはいない。サイド7は後方基地ではなかったか。その思い込みが隙を作ったことに気づかない。
「くそっ!あの赤いMSめ……《赤い彗星》きどりか!この次は必ず撃墜してやる!」
負けん気の強さとしぶとさがジェリドをここまで育て上げたと言っていい。ハイスクールでも大学でも、常にエリートでありながら、負けを認めず勝つまでこだわり続ける執念がジェリドらしさだった。
「……リド中尉、ジェ…ド中尉、聞こ…ますか?」
至近でノイズ混じりだが機付長のカッセ曹長の声がした。ミノフスキー粒子の影響がコロニー内に及んでいるとなれば、重大である。ライフラインに支障がでる可能性もあり、住民の避難を開始しなければならないが、〈グリーンノア〉には少なくとも500万人以上の人口がある。避難させるにしても近隣に民生用のコロニーはなかった。
カッセはジェリドの墜落をみて駆けつけていた。最新鋭機である《マークU》をこんなことで失う訳にはいかないからだ。ジェリドより歳は一回りほどカッセの方が上になるが、カッセはジェリドに対して丁寧な態度を崩さない。地球主義者であるからだ。一年戦争では、激戦のアジア戦線を生き抜いた生粋のアースノイドであり、ジオンに深い恨みがある。
「カッセ機付長か?モニターが死んで外の状況が分からん、出ても大丈夫か?」
「瓦礫…機体が埋まっ……るだけ……から、ハッ…を…けるに……障あり…せん。機体…動か……いでくだ…い!」
途切れ途切れの通信はミノフス
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