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ゾンビの世界は意外に余裕だった
1話、研究所
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原警備主任は納得して鍵を譲ってくれた。まあ武器庫と言っても拳銃二十丁に催涙弾、警棒ぐらいしかない。

「ありがとうございます。それから、銃は持っていった方が良さそうですよ」

 拳銃を武器庫にしまおうとする警備員達に、俺は警告した。

「しかし、規則違反どころか法律違反になります」

「法律はさすがに人に噛みつくゾンビまで想定していなかったと思いますよ。まあ、皆さんの命です。お任せしますよ」

 警備員達は顔を見合わせた後、俺に感謝するように頭を下げてから拳銃を自分達のホルスターに戻した。彼らは正面玄関に止めてあった七台の車に次々と乗り込んだ。俺も自分の車に乗って後ろについていく。

「では、皆さん。気をつけて」

 俺は研究所の敷地の門から、去っていく7台の車列を見送った。道路は両脇を鬱蒼とした杉林に覆われていて、どころからゾンビが出てもおかしく雰囲気だ。

 寒気で体を震わせた俺は急に一人でいることが怖くなった。すぐに正門がまだ空いていることに気づき、慌てて門を閉める。それから、警備員に運ばせておいたワンボックスカーやトラックなどを正門に横付けした。

 一仕事を終えて俺は初秋の空を見上げた。それから各門と敷地の周囲を壁に問題ないか徒歩で見回り、研究所の本館に引き上げた。

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