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真鉄のその艦、日の本に
第十二話 終局
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(……あの日、私、そして中野さんに課されていた任務は、裏切り者の抹殺。…その為の、荷電粒子重砲の“発射”。)

遠沢は窓の外の流れていく景色を眺めながら、内心で呟いた。
荷電粒子重砲の発射は、裏切り者の中で最も厄介な、最強の戦士・瀧を殺す為に必要な事だった。瀧を倒すには、大量破壊兵器によって広範囲を攻撃する以外に方法はない。どんな優秀な兵を使った所で、瀧を殺すには心もとない。1人を殺すのに何と大それた事をと思うが、瀧も瀧で常識外れな人でなしなので、ある意味仕方ないのかもしれない。そして、瀧を殺す為に射った荷電粒子重砲が、“ついでに”東機関に敵対する機関を含む日本政府を全て焼き払ってしまうが、それも“仕方がない”。テロリストのやった事として片付けようというのが作戦の概要であった。建御雷を利用した、裏切り者の複製人間達の反逆プランを上戸は知っていた上に、それを利用した。自分達にとって最も都合の良い形で。だから、中野は本木一味に紛れ込み、状況を把握していたのにも関わらず、本気で事態を止めようなどとはしなかった。荷電粒子重砲を射つのが任務なのだから。……結局中野は大量破壊兵器のボタンを押す覚悟を持てず、これまた“任務に失敗”した事にして自ら命を絶った。

瀧を東京にとどめ置く為には、瀧と戦って時間を稼ぐ必要があったが、その役目は最強の物真似師である上戸局長自らが買って出た。あくまで物真似である。瀧の戦闘力を丸ごとコピーしたとして、瀧を倒す所まではいかない可能性が高い。しかし瀧を東京に釘付けにして時間を稼ぐには十分だった。そして最後の瞬間も、瀧は自らの勝利を疑わなかっただろう。荷電粒子重砲による日本政府への直接攻撃は瀧自身の計画にもあった事だから。
しかし実際のところ、瀧が最も倒したかったはずの東機関は上戸が戦っている間に天皇陛下と共に東京を離れていた。瀧にとっての誤算は、上戸が自分の計画を全て把握した上でその計画に乗っかろうとしていた事だった。上戸がここまで多くの犠牲を出すような自分の計画を知っていたのなら、もっと本気で潰しにくるだろうと考えており、荷電粒子重砲を射つ所までスムーズに事が進んだのなら、それは上戸が自分の計画を把握しきれていなかった事の証拠、そう考えていた。そこの所は、上戸に対する、“多くの国民の犠牲を許容する訳はない”という、ある種の信頼があったのだろう。……実際は、上戸は夥しい犠牲を防ぐ事よりも、機関を出た裏切り者を全員殺す事を優先していた。“人命軽視、目標優先”……東機関が複製人間のような“人でなし”を作り出す前から、“人でなし”と呼ばれていた所以を、瀧は忘れてしまったらしい。

それでも、せめて上戸だけでも殺れていれば、瀧もまだ報われる所があっただろう。上戸は生きている。瀧と一緒に、荷電粒子重砲に焼き尽くされたのにも関わ
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