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真鉄のその艦、日の本に
第十二話 終局
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うが!日本だの日本人だの、そんな括りは遠い昔に誰かが決めたもんだろうに、そんなもんに尽くして……俺は結局一番大事な連中を失うたんじゃい!しかも、パクった工作船の船員は腑抜けの政府が勝手に釈放するわ、世間は何故即刻撃沈しなかったとか何とか文句をつけてくるわ……。俺だってなぁ!こんな国潰れっちまえば良いだなんて思った事は一度や二度の話じゃねぇんだよ!」

本木は、長岡の目を見たまま、大きく咳き込んだ。また口から血が溢れる。
何も言い返せない。その元気もないくらい、長岡の銃弾は効いたらしい。

「……それでも結局、俺は軍人として生きるのを辞められなかった。怖かったんだ。軍人としての生き方まで否定して、自分が空っぽになっちまうのが。自分が空っぽだって認めちまう事が。だけん、ああいった嘘を自分で信じ込む事で、これまで生きてきたんだよ。……もう、そうして生きる他に生き方なんて無かったんだ。お前と違って俺はそれを受け入れたんだよ!」
「……ッ!」

襟首を掴んだまま、長岡が視線をふと落としたタイミングで本木はぐったりとしていた体を動かした。不意を突かれた長岡は、自分の腹に冷たい物がめり込んだのを感じた。自分の中から、液体が流れ始める。

刺された。
そう知覚できた時から、痛みが急激に湧き上がってきた。

「……武器を隠し持ってたのは、俺も同じじゃけ。これでおあいこじゃの……」

顔を血で汚しながら、本木がニンマリとした笑みを浮かべた。長岡は本木を掴んでいた手を離し、仰向けに倒れた本木ともども床に崩れ落ちた。力が一気に、入らなくなった。

「……お前にも、葛藤があったって事は分かったわ……失うもんすら与えられなかった俺としちゃ、それでもまだ贅沢な話に聞こえたけどの……」
「……やかましい。お前が俺の事、国に対して何の疑問も持たないようなアホやと思ってそうだったけん、誤りを正してやっただけじゃい……」

長岡はズルズルと這って、もう一度本木に近づいた。

「……お前が思うとるほど、普通の人間も自由には生きとらん……社会だの国だのに生まれた時から組み込まれて、その枠の中でしか生きていけんというのは、お前らも俺らも変わりはないわ……お前らは確かに不幸な境遇の人でなしだ……でも他の連中にその不幸のお裾分けなんざすんな……一人で不幸を抱きかかえて、おっ死ね!!」

長岡は自分の腹に刺さったナイフを勢い良く引き抜き、元の持ち主である本木に深々と突き刺した。更なる苦痛に本木の体がぶるっと震えるが、体の反応とは別に、その表情は穏やかだった。

「……は、は……一人で死ね、か……厳しいのう……もう少し、同情してくれよ……は、は……でもお前にも愛想尽かされるとは……俺も……お終いじゃ……」

本木の口から、息がすーっと漏れていった。力が抜
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