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真鉄のその艦、日の本に
第十二話 終局
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のお前には、俺に勝つことなんざ不可能じゃ。」
「んな事関係あるかいや!俺は絶対に負けんけんな!人が作り出したもんに人が負けてたまるかい!」

意気がる長岡に、本木は呆れたようにため息をついた。そしてコンソールの椅子から腰を浮かし、本木も銃を遠くに放り投げる。

「……やっぱり、全てが終わる前に、お前とはけじめを付けておかにゃーならんのう」

丸腰の長岡に対して、同じように丸腰になった本木が飛びかかった。

バァーーーン!

甲高い破裂音が部屋に響いた。




ーーーーーーーーーーーーー


「なっ……お前……」

腹部から血を流して本木は崩れ落ちる。
その目は驚愕に見開いている。その目の先には、ポケットから瞬時に取り出した拳銃を構えた長岡の姿があった。本木を捉えたのはまさに、長岡の放った銃弾だった。

「……誰も、俺が銃を二つ持っとらんとは言ってないで?」

長岡は、啖呵を切っていた時とは打って変わった冷め切った目で本木を見下ろしていた。

「……お前の、俺に対しての信頼だけは、身に沁みてよく分かった。俺は絶対に卑怯な事はしないと。丸腰を装った騙し討ちなんぞ絶対にしないと、お前は思った。お前は俺を信頼した訳だ。ほんで、俺のバカな誘いに乗って、飛びかかってきた訳だ」
「…………」

口からも血を溢れさせながら、本木は頷く。血を吐く本木の近くまで長岡は歩み寄った。

「最後の最後まで迷った。こげなアホみたいな、卑怯な手を使うかどうかは。でもお前が、俺の嫁の話を持ち出してきた、その時に決意が固まったわ」

長岡は本木の襟首を掴んだ。そして、大きく揺さぶった。

「何が“自分で国の役に立つ生き方を選んだ”じゃい。何が“仕事に生きて下さい”だ!俺の嫁はな、死に際にそんな事は言っちゃくれなかった!その話は嘘なんだよ!そんな下らん話をでっち上げでもしなけりゃ、俺は心を保てんかった、ただそれだけの話だこの野郎!」

本木の腹部の銃創からは血がどくどくと溢れる。それにも全く構わず、長岡は本木に口角泡を飛ばしながら吠えたてた。

「何が真面目だ、何が“良い人”だ、ふざけるな!知った風な口叩くんじゃないわ!俺もこの国への愛想なんてとっくに尽きてる、この仕事への思いなんざとっくに消えて失せとるんだ馬鹿たれ!俺の嫁はな、俺のガキ産もうとして死んだんだよ、最後の言葉は“あなた、助けて”……俺に助けを求めて死んだんだ!俺はその場所にゃ居なかったんだよ、支那の工作船パクってる最中だったけんな!そうして自分の嫁とガキが死んでいく最中に俺は“国の為の仕事”をしてたって訳だ!そして最愛の連中を助けられなんだ代わりに、俺は日本人を助けた……冗談じゃないわい、日本人なんてどこに居るんだ!そんなもん結局はただの他人だろ
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