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真鉄のその艦、日の本に
第十二話 終局
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風呂元に入れてもろうたんじゃ。」
「……その記憶がデタラメで嘘っぱちだった」
「じゃ、去年の八月の休暇に皆で松田球場に野球見に行って、大騒ぎした記憶はどうじゃ?」

長岡の中にその記憶はしっかりと残っている。暑い八月に、本木と脇本、田中とでプロ野球を見に行った。楽しかった。艦隊勤務から離れ、教室の椅子に座って研修の毎日というだけでも、学生時分に戻ったように思われたが、そうして野球観戦に出かけると、いよいよ子どものようにはしゃいで良い年したオッサン同士で笑いあっていた。あの記憶は、風呂元の記憶操作から解き放たれても、消えなかった。……楽しかった、思い出だった。

「……もっと違う形で出会いたかったの」
「……今さら、それを言っても遅いわい」
「俺がお前を、友達と思っとるという事は言うておきたかっただけよ。だからこそ、ヤケッパチになって、らしくないお前を見るのは悲しいというだけよ。」

本木はしんみりと、この場にはおよそ似つかわしくない表情を見せた。その表情が、長岡には癪に触った。

「何をさっきからゴチャゴチャぬかしとんじゃい!何が悲しいだ、こんのアホが!お前が今押そうとしとるボタンは数え切れんほどの人間殺せるもんだ、そんなもんちらつかせてきとる時点でお前なんざ人間じゃないわ!お前らのせいで一体これまでに何人死んだと思っとるんだこの野郎!お前らは人でなしだ!今更人の振りなんざすんな!!」
「あぁ、確かにその通りやの。俺は人じゃない。国に作られた、国の役に立つ為に作られた人ならざるもんじゃ。……だからお前ら人が憎いんじゃい。長岡、お前はの、自分で国の役に立つ生き方を選んどる。死に別れる時に“仕事に生きて下さい”そう言うてくれる嫁さんも居た。だが俺らは違う。俺らには選択の余地なんざ無いんじゃ。ある意味、自分から国の為に生きようなんて選択をした……お前ら真っ当な軍人が羨ましい。……なぁ、これ以上俺らのような哀れな生き物を産み出さんように、この国をリセットする事が、そんなにいけん事か?確かに人は大勢死ぬ。だがそいつらはのう、何も知らずにこの国に、俺らのようなクズの犠牲の上に生かされてきたんじゃないんか?本当にそいつらは、“関係のない善良な人間”なんか?違うじゃろ。知らないのも罪だろうが……」
「……あくまでもお前は、日本を、日本人を許さんつもりらしいな……」

長岡は、その手に持った拳銃を逆手に持ち替えて、部屋の隅っこに放り投げた。武器を捨てるこの行為に、本木はまた眉をピク、と動かす。長岡は両手の拳を握り、半身で構えて見せた。

「来いや本木!お前に武器なんざ要らん!人間の力、日本人の力ってもんを見せたるわい!拳でかかってこいや、この人でなしが!」
「……あのな、言うとくけど俺は、一応肉体強化されとるけんな。凡人の、それもおっさん
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