悪魔の島編
EP.18 ウルティアの誘い
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走り――」
「いや、いい」
呪われた身体からの解放の希望に顔を輝かせ、走り出そうとした村人を制止したワタルは、懐から一枚の紙を取り出し、何かを書きはじめた。
「それは?」
「式神っていってな。まあ、早い話が雑用だ――よし、エルザのところに行け」
書き終えたワタルは紙に魔力を込めると、それは鳥の形になって飛んでいく。
ちなみに、ワタルの式神がこなす雑用の中で一番の得意分野は建築物の補修作業だ。
妖精の尻尾の面々――主にナツとエルザだが――の巻き添えで破損した物の修理、酷い時は全損して一から建て直している事も、ワタルが『ストッパー』と呼ばれている主な要因である。
「(式神そんなに使ってないのに、建築関連のスキルが異常になってるなー……)」
いくら言いきかせても、方々に頭を下げる回数や補修作業に式神を使う機会が減る気配が無い事に半ば現実逃避じみた思考をしながら、珍しそうに式神が飛んで行った方向を見ている村人たちの傍らで、ワタルは溜息を吐くのだった。
少し経って、エルザ達は村に到着、ワタルと同様に村が再生している事に驚く。
ワタルが同じような反応をする彼らに苦笑しながら近付くと、エルザが気付いて近寄る。
その表情は平静そのものだが、ワタルは心なしか薄ら寒いものを感じ、声を掛け損ねた。
「ワタル、その額はどうしたんだ?」
「あ、ああ、少しな……エルザ、どうかしたのか」
「そうかそうか……じゃあ、その少しは――」
エルザに額の傷を指摘され、応えるワタルの胸に残る嫌な予感は消えない。
その正体を探り当てるより早く、ワタルは彼女に詰め寄られて怯んだように後ずさる。
「この香水の匂いとも関係があるのか?」
「香水?」
「ああ。お前から女物の香水の匂いがするのだが」
エルザの声は、彼女の表情と同じく平静そのものだが、ワタルは何故か怖いものを感じた。
そして言われた事を考える……女物の香水――そういえばウルティアに結構密に接触されたような……。
「(それ以外にある訳ねーな……ってか、ナツじゃあるまいし、なんで香水の匂いなんて分かるんだよ!?)」
エルザが何について言っているのかを理解したワタルは答えを胸中でのみ呟く。
正体と思惑がどうあれ、ウルティアは表向き評議員であり、彼女の事を言うのは事実をややこしくするだけで面倒極まりないと、ワタルは考えた。
そこで、ウルティアに触れずに何とか弁解しようと、今までになく頭を回転させたワタルの視界に桜色が映る。
「(そうだ、ナツだ!)」
ナツの鋭い嗅覚なら、ウルティアがザルティの姿をしていた時の匂いを覚えているはず。
彼女の変身魔法はスペシャリスト
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