第二十話 錬金術その四
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「学んでいたとしてもね」
「おかしくなかったんだな」
「そう、けれどね」
「性格的にか」
「ああしてね、命を作ってそして消費する様なことは」
怪人を薊達に差し向けて戦わせることは、というのだ。
「絶対にしない人だったよ」
「命を弄ぶことはか」
「うん、する人じゃなかったよ」
「いい人だったんですね」
裕香も言ってきた。
「本当に」
「うん、そうだったよ」
「紳士でもあってね」
「礼儀正しくて」
「ああいう人を君子というんだろうね」
「君子っていいますと」
裕香は智和の今の言葉から古典、それも漢文の授業を思い出して述べた。
「素晴らしい人ってことですよね」
「簡単に言うとね」
「そう、孫の僕が言うのも何だけれど」
「そうしたことをする人では」
「間違ってもなかったよ」
そうだったというのだ。
「とてもね」
「そうですか。それじゃあ」
「お祖父さんではないよ」
間違って、というのだ。
「僕は今でも尊敬しているしね」
「先輩の尊敬する人でもあるんですね」
菊が智和にこう言うのだった。
「そうだったんですね」
「とてもね。他にも尊敬する人はいるけれど」
「そちらの人は誰ですか?」
「湯川秀樹さんだよ」
「あのノーベル賞の」
「まあノーベル賞を受賞してもね」
それでもだとだ、ここで智和はある真理を述べた。
「素晴らしい人だとは限らないけれどね」
「幾ら素晴らしい業績があっても」
「それでもですね」
「うん、それでいい人とはね」
限らないというのだ、業績と人格は別だということだ。
「ニュートンだって人間としては酷かったし」
「偉人って言われてますけれど」
「違ったんですね」
「うん、ベートーベンやモーツァルトもそうだったしね」
どちらも人格はかなり問題があった、ベートーベンに至ってはその非常に付き合いにくい人格故に一生孤独だった。
「森鴎外や夏目漱石も」
「夏目漱石は癇癪持ちで被害妄想が強かったですね」
菖蒲が言ってきた。
「そして子供にDVを振るったり」
「今で言うとね」
「躾ではなかったのですね」
「ステッキで何度も何度も叩くとかね」
実際にそうしたことをしたという、漱石は。
「その時でもね」
「やり過ぎですね」
「そうした人だったからね」
「とてもいい人とは」
「言えなかったよ」
漱石にしろそうだった。
「偉人とはいっても手本にすべきかというと」
「違いますね」
「人格がいいとは限らないからね」
「では」
「うん、僕はお祖父さんは人格者だったからね」
それでだというのだ。
「僕は尊敬しているんだ」
「そうですか」
「だから錬金術をしていたとしても」
それでもだとだ、智和は少女達に断言した。
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