第三章
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第三章
「俺もだ」
彼は言った。
「オジータとずっといたい。それが果たせるのなら人でなくてもいい」
「迷いはないな」
「ああ」
老人にも答えた。
「だから。行く」
「わかった」
老人はそこまで聞いて頷いた。頷いてもう何も止めはしなかった。
「ではな。幸せになるのだ」
「幸せに、か」
「人の世だけが幸せではない」
老人はそう二人に告げた。厳かな、まるで神のそれのような声であった。
「他にも幸せがあるのだからな」
「そうなのか」
「悲しいことじゃがな」
老人はそう述べると俯いた。俯いて何も言えなかった。
「人の世は幸せだけがあるのではない。悲しみも苦しみもある」
真理であった。悲しい真理である。
「それから逃げられなくても。生まれ変われば」
「生まれ変わるのか」
「そうしてなればよい。二人でな」
そう言って二人を送り出した。ワヨタとオジータはその足で湖に向かった。もう夜になっていて月明かりを頼りにして湖に向かったのであった。
静かに澄んだ湖は優しい鏡になっていた。そこに森の木々と白く大きな月が浮かんでいた。満月が静かに浮かんでいた。二人はそれを並んで見ていた。
「ワヨタ」
オジータが彼に声をかけてきた。
「ここに二人で入ればいいのね」
「そうだ」
ワヨタも彼に答える。
「そしてずっと一緒に」
「人でなくなっても」
「それでも一緒だ」
彼は言う。
「ずっとな」
「ええ。もう離れることなく」
オジータは俯いた顔で述べる。
「一緒にね」
「オジータ」
二人は互いの肩に身体を寄せた。そのまま湖に一歩一歩入っていく。二人はゆっくりと湖の中に消えていった。白い月が優しい光を放ち二人を見守っていたのだった。
二人はそれから姿を消した。彼等を見た者は誰もいない。サラナクの者もオジータを嫁に貰う筈だったニカルイの者も二人を探したが遂に見つからなかった。そのかわり別のものを見つけたのだった。
「おい、あれ」
サラナクの者の一人が他の者に声をかける。
「あれを見ろよ」
「どうしたんだ?」
「湖だ」
サラナクの者だけではない。ニカルイの者達もそれに応える。彼が指差していたのは湖であった。
そこに今までなかったものがあった。それは花だった。水に咲く花、水蓮であった。
「あの花はまさか」
「そうじゃ」
ここであの魔法使いの老人が出て来た。目は見えないがそれでも彼等に告げる為にやって来たのだ。
「あの二人じゃ」
「花になったのですか」
「うむ、この世では一緒になれぬからじゃ」
「馬鹿な、どうして」
それを聞いたオジータの父が呻く。彼もまた娘のことが気掛かりで探し回っていたのだ。
「どうしてこんなことを」
「人の世では結ばれぬのなら。別の
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