第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
それでどちらも入港に全神経を集中させていたのだ、そしてその隙にだったのだ。
イタリア軍が入って来たのだ。その結果だったのである。
「してやられたな」
「イタリア軍に」
「というかあの連中がこんなことやるか」
「案外侮れないな」
「ああ、全くだよ」
「戦場では弱いのにな」
実際に弱いどころではない、逃げ足いや撤退の速さは異常だが。
「こうした個々でやると強いな」
「ああ、戦争を超えたらな」
「そういえばあいつ等そういう状況なら強いな」
「案外な」
「あれでな」
ここでこのことに気付いた彼等だった。
「あの連中も馬鹿に出来ない」
「そうなんだな」
「個々の武勇は強いんだな」
「自分達だけの力と技、頭で戦うと」
「組織で戦うのなら違うけれどな」
このことがわかったのだった、彼等も。第二次世界大戦での一幕だ。
老人は若者達にこのことを話した、すると話を聴き終えた若者達は目を丸くさせてこう老人に言ったのだった。
「じゃあ爺さんその時にか」
「アレクサンドリアにいたのか」
「随分ご高齢だと思ったが」
「そうだったんだな」
「あの時のわしはセーラー服が似合う男前だった」
その頃の自分のことも言った老人だった。
「もてたぞ」
「いや、もてたかどうかはわからないけれどな」
「爺さんもあの戦争に参加してたんだな」
「しかも水兵さんだったのか」
「そうだったんだな」
「そうじゃ。わしはこの目で見たのじゃ」
まさに他ならぬ自分自身が、というのだ。
「港からな。戦艦が轟音を立てて揺らぐのを」
「イタリア軍の工作員にやられてか」
「戦艦が動けなくなったんだな」
「ドイツ軍でなくな」
このことはとりわけ強調した。
「イタリア軍にやられたのじゃよ」
「イタリア人にか」
「やられたのか」
「そうじゃ。だからな」
このことから、というのだ。
「イタリアもあれでな」
「馬鹿に出来ないんだな」
「強いんだな」
「油断は出来ん。少なくとも個々で戦うと強い」
「組織で戦うとわからないにしても」
「実はそうなんだな」
「ぞうじゃ、イタリア人といっても馬鹿にするでないぞ」
老人は強い声で若者達に言った。
「さもないとまたやられるぞ」
「わかったよ、イタリア軍でもか」
「馬鹿に出来ないんだな」
「馬鹿にしてるとまたやられるか」
「沈められるか」
「その通り、二度とあんなことになってたまるか」
老人は若き日に見た戦艦が大きく揺れる姿、しかも自分達の港の中でそうなった姿を瞼に浮かべながら言った。
「絶対にな」
「ああ、わかったよ」
「それもよくな」
「何かあの戦争からイギリス落ちてくばかりの気がするけれどな」
「オリンピックも失敗したしな」
「成功とは言えない
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ