第一章
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小さくとも
イタリア軍、そう聞くと誰もがこう言った。
「弱い」
「すぐに逃げる」
「捕虜がやたら多い」
「脱走だけは天下一品だろ」
「兵器もとんでもないものばかりだよ」
「本当に弱いからな」
「ドイツの敗因の一つだったな」
こう言う、誰もが。だがそれでもだった。
年配のイギリス人がだ、そのイタリア軍を笑っている若者達にこう言ったのだった。
「いや、それが時々侮れなかったんだよ」
「サッカーだとそうだよな」
「イタリア強いからな」
「あとオペラでもな」
「そういうのは強いよな」
「歌は上手いよ」
「それに最近野球もやってるな」
若者達は老人に笑って返す、彼等はイタリアは決して嫌いではないがそれでも弱いことについては確信していた。
「俺達も最近野球やってるけどな」
「イタリアの方が強いのは確かだな」
「ワインもパスタも美味い」
「基本スペック高いか」
「結構馬鹿っぽいっていうかそんなところあるけれどな」
「いい大学も一杯あるしな」
「冬のスポーツも凄いぜ」
冬季オリンピックを開催したこともある。
「レースだっていいし」
「車いいの作るからな」
「戦争以外はいいよな」
「十一人から増えるとてんでだけれどな」
「その十一人から増えた時の話だよ」
見れば老人は九十を超えていると思われる、何時どうなってもおかしくない様な外見だ。しかしそれでも彼は若者達に強い声で言い切った。
「第二次世界大戦の時だよ」
「えっ、爺さんマジか?」
「本当にかよ、それ」
「第二次世界大戦の頃か」
「あの戦争の時の話かよ」
「そうだよ、じゃあ何の話だと思ってたんだ」
老人はこう若者達に返した。
「一体」
「だから戦争以外のことだろ」
「イタリア人は戦争以外は得意だろ」
「というか戦争は無茶苦茶弱いだろうに」
「ちょっとこづいたらピーーーピーーー泣いてな」
鬼のチトー=パルチザンも彼等には優しかったという、あまりにも泣いて命乞いをするので気の毒になってだ。尚ユーゴスラビアに攻め込んだのは彼等であってドイツ軍ではない。
「それでな命乞いばかりしてな」
「捕虜になっても遊んでるだけでな」
「パスタにワインばかりで」
「そんな連中だろ、戦場でも」
「それで何で凄いんだよ」
「ドイツか日本と間違えてないか?」
本気で凄かった国々ではないかという者すらいた。
「爺さん本当にイタリアと戦ってたのかよ」
「ドイツ軍か日本軍と間違えてないかい?」
「幾ら何でもイタリア相手に手こずったとかないだろ」
「確かにあの戦争でうちの国は大したことなかったさ」
「いいところなかったよ」
勝つには勝った、しかし殴られっぱなしだった。何しろ枢軸国だけでなく
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