第五章
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二人は夜の捜査に出た、ゴーは囮となり夜の街に出て。
ユンは少し離れたところで隠れて彼についていった、すると。
暫くしてだった、ゴーの前から。
黒く長い髪の女が来た、女の髪は膝までありそうなさらりとした長いものだった。その髪は夜の中にも絹の様に見えた。
アオザイだ、しかもそのアオザイの色は。
赤だった、黒髪の間に血の様に赤いアオザイが見えた。
顔は美しい、細面で髪の様に白い、切れ長の目は黒く睫毛は長い。口は横に広く唇は紅だ。ぞっとする様な美貌だ。
その女を見てだ、二人はそれぞれの場で確信した。
この女だ、表情が思わず強張った。
だがゴーもユンもだった、今は。
足を止めず隠れている場所から出なかった、そうしてだった。
ゴーは女の前に進みユンは隠れながら進んだ、二人共何時でも銃を撃てる様にしている。
そのうえでだった、ゴーは。
女に接近していく、何時でも攻撃出来る様に警戒しながら。
女が何時何をしてくるかわからない、その緊張の中で。
彼は女とお互いに手が届く距離まで来た、しかしまだだった。
女は何もしてこなかった、その距離でも。さらに近付くがそれでもだった。
遂に擦れ違った、時間的にはゴーにとってもユンにとっても一瞬だった。しかし二人はその一瞬を気が遠くなる程長く感じた。
擦れ違っても何もなかった、ここで。
ゴーは女の方を無意識的に、背中を見せた瞬間こそが最も危ういが故に女の方を振り向いた。左手はホルスターの銃をもう持っている。
その彼にだ、何と。
女が振り向いてきていた、美貌の顔に鬼の様なぞっとする笑みを浮かべてきていて。
その髪の毛がゴーに迫ってきていた、ユンも銃を手に慌てて飛び出た。ゴーも銃を構えて撃とうとする。だが。
女の髪が急に弾き返された、ゴーの身体に触れる直前で。まるで壁にぶつかった様に。
女の顔が驚愕に歪んだ、その女にだった。
二人は即座に銃撃を加えた、両手に持っている拳銃を何度も放つ。銃弾は女の胸や額を幾度も貫いた。
女はぞっとする顔で地獄の底から聴こえる様な呻き声を出してその場に倒れた、その女の断末魔の顔を見ながら。
ゴーは自分の傍に駆けつけてきたユンにこう言った。ユンも女を見ている。
「こいつは何だろうな」
「人間じゃないことは確かだな」
「ああ、そうだな」
ゴーもこのことは察していた、そのうえでユンに言った。
「それにな」
「髪の毛がな」
「弾き返されたよな」
「まさかと思うが」
ゴーは自分の考えを述べた。
「経典と仏像のお陰か」
「お寺で貰ったな」
「それのお陰か」
「じゃあこいつのことはお寺で聞くべきだろうな」
「ああ、見ろよ」
ここでだ、ゴーはユンに女の骸こと切れたそれを指差して言った。
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