第四章
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「ここは一つ俺が囮になってな」
「囮?」
「ああ、犠牲者は絶対に一人で見付かってるよな」
「そういえばそうだな」
ここでだ、ユンもあの観光客のことを思い出した。
「一人の人ばかりが襲われてるな」
「犯人は夜に一人で出歩いている奴しか襲わないんだよ、どうやらな」
二人は今昼に話をしている、昼食のインサイがかなり効いたビーフンを楽しみながら。ユンは炒飯を食べている。
「だからここはな」
「御前がか」
「ああ、夜の街に一人で歩いてな」
「俺は少し離れた場所に隠れてか」
「そいつが出て来た時にな」
まさにだ、その時にだというのだ。
「やってくれるか」
「そいつが御前に襲い掛かってきた時にか」
「ああ、そうしてくれるか」
「かなり危険だぞ」
ユンは炒飯をその上に乗せているインサイと一緒に食べつつゴーに言った。
「それは」
「承知のうえさ、けれどそうでもないとな」
「今回の事件はか」
「犯人が出て来ないと思うからな」
だからだというのだ。
「ここはやってみるさ」
「命知らずだな」
「生きる時は生きるさ」
ゴーは笑ってこうユンに返した。
「というか俺は運がいいんだよ」
「だから死なないっていうのか」
「そうさ、だからな」
「ここはその強運を信じてか」
「御前も信じてな」
その笑顔でユンにも言った。
「そうするさ」
「俺もか」
「頼むな、相手が出て来た時は」
「わかった」
ユンも自分を信じていると言われてだった、それで。
確かな顔になってだ、こうゴーに返した。
「じゃあ任せろ」
「ああ、今夜早速やるからな」
「それで犯人を見事捕まえたらな」
「ボーナスを貰おうな」
「ちょっとその前にやっておくことがあるな」
ここでだ、ユンはゴーにこんなことを言った。
「お寺に行っておくか」
「お経でも貰うのか」
「そうだよ、化けものとかならお経には弱いだろ」
だからだというのだ。
「ここはな」
「そうだな、それがいいだろうな」
ゴーもユンのその言葉に頷いて応えた。
「吸血鬼が相手ならな」
「そうだよ、お経とか必要だろ」
「教会の方がいいかも知れないな」
ゴーは吸血鬼が欧州のイメージが強いからこうも言った。
「ドラキュラ伯爵とかだと」
「いや、牙の跡がないからな」
「そっちじゃないから」
「だから経典でいいだろ」
仏教のそれでだというのだ。
「とにかく仏様の助けはあった方がいいな」
「そうだな。どうも人間が相手じゃないみたいだからな」
「そういうことでな」
こうして二人は仏教の寺院に赴き経典を貰った、ついでに小さな仏像も貰いそれをそれぞれの懐の中に入れた。
経典も制服のポケットの中や腹のところに潜ませた、こうして捜査に出るのだった
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