第五章
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「ちょっといいかい？」
「俺達今金ないんだよ」
「それでなんだけれどな」
「ちょっと貸してくれるかい？」
「悪いけれど俺もないんだよ」
裕次郎は明るく彼等に返した。
「悪いな」
「おいおい、それで済ませるのかよ」
「ないで済まないんだよ」
「借りるだけなんだよ」
「だからいいよな」
「やれやれだな、こうした展開はな」
どうかとだ、笑って言った裕次郎だった。
そうしてだ、隣にいる杏にこう言ったのだった。
「悪いけれどな」
「戦うの？」
「こうした奴にはな」
ボクシングの構えを取っての言葉だった。
「やっぱりちょっとやらないとな」
「そうなのね」
「杏ちゃんは俺の傍から離れないでくれよ」
ひらひらのスカートにあちこちにアクセサリーがあるゴスロリの格好になっている杏に対してこう言ったのだった。
「危ないからな」
「いや、ちょっとね」
「ちょっと？」
「私空手部なの知ってるわよね」
「黒帯だよな」
「ええ、だからね」
それでだとだ、杏もだった。
構えた、彼女がしている空手のそれをだ。そのうえで裕次郎に言うのだった。
「私のことは気にしないで」
「いいのかよ、危ないぜ」
「ううん、何かね」
「何か？」
「女の子らしくありたいけれど」
それでもだった、彼氏が自分の為に戦うのならだ。杏はにやりとしてそのうえでこう言った。
「こうした時、戦えるのなら」
「出来る限りは、か」
「戦うのが空手家だからね」
「それでか」
「空手は大切な相手を護る為のものだからね」
部活でいつもこう教えられている、それで言った言葉だ。
「自分の心身を鍛えると共にね」
「ボクシングと同じだな」
「じゃあね」
「ああ、悪いけれどさ」
「悪くないわよ」
やはり微笑んで言う杏だった。
「自分の身は自分で護るから」
「じゃあな」
「ええ、後ろは任せて」
こう女の子らしくない言葉さえ言ってだ、杏は自分と裕次郎を囲む柄の悪い連中と対した。相手は警棒なりナイフなりを出したが。
二人は恐れなかった、そしてまずは一人がだった。
裕次郎のボディーブローを受けて蹲った、腹へのダメージは響き動けなくなることからそれを放ったのである。
そしてだ、杏もだ。
普段は禁じられているが今は非常時でだ、それでだった。
棒を持って向かって来た相手のだ、金的を。
蹴った、潰れはしなかったが。
その一撃でその相手は激痛で蹲った、もう動けなかった。
それで勢いに乗ってだ、二人で相手をだった。
あっという間にのしてだ、後は百十番をして終わった。そうして警察にならず者達を引き渡した後でだった。
杏はデートを再開してからだ、しまったという顔で裕次郎に言った。
「ちょっとさっきの戦いは
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