第四章
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「そしてペリは本来良き存在じゃが」
「悪いペリもいるですか?」
「いや、ペリだけとは限らないのじゃ」
目に宿るものはというのだ。
「イブリースも宿るのじゃ」
「悪しき存在もですか」
「そうじゃ、目は心も出る場所だからのう」
「強い目にはですか」
「そうした存在も寄るからのう」
イブリースの様な呪われた存在もだというのだ。
「だからなのじゃ」
「私の目にはペリもイブリースも宿っているのですか」
「両方な。これは非常に珍しいことじゃ」
「邪眼よね」
ここでまた母が老人に言ってきた。
「確か」
「うむ、そもそも邪眼とは目力が強いということじゃが」
だから呪いも放つのだ、エジプト神話の神であるホルスも邪眼の持ち主と言われるがこれは太陽神である彼の目の光の強さのことだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「うむ、イブリースは厄介じゃな」
「ではどうしたらいいのかしら」
「祓わねばならん」
老人のイタの母への問いは簡潔なものだった。
「この娘さんが迷惑ならな」
「はい、出来れば」
イタもだ、こう老人にお願いをした。
「お願いします」
「しかしイブリースを祓うとな」
ここでだ、老人はこうイタに言った。
「それと共にな」
「ペリもですか」
「一緒にいるからな」
イブリースもペリもだ、イタの目の中にいるからだというのだ。
「イブリースを祓うとな」
「ペリもですか」
「うむ、どっちもいなくなる」
そうなるというのだ。
「それでもよいか」
「はい、どちらにしても私が見て何かを起こるのは」
「嫌な気分か」
「結局嫌な気持ちにならないといいんですね」
「そうした気持ちで人を見なければな」
そうすればというのだ。
「悪いことは起こらぬ」
「そうですね、けれど」
「人はよいことばかり思わぬものじゃ」
このこともだ、老人はイタに話した。
「どうしても悪いことも思ってしまう」
「それにですね」
「しかもな、見なければ生きていけぬ」
見えているのならだ。
「それならな」
「そうですね。じゃあ」
「どっちもじゃな」
「残念ですけれど私もどうしても悪いことを思ってしまう時があります」
イタは自分は聖人君子ではないと思っている、どうしても悪いことを思ってしまう時があるのが人間だ。そのことがわかっているからだ。
イタはだ、こう老人に言うのだ。
「ですから。悪いことを起こしてしまうのなら」
「いいことが消えてしまってもじゃな」
「はい、人にいいことをしても迷惑をかければ一緒ですね」
「それは一理あるのう」
老人もイタのその言葉を否定しなかった、千の善行は一の悪行で台無しになる。信頼はそうして崩れるものだ。
だからだ、イタも自分が見て悪いことが起こる
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