第四章
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「何とかね」
「うん、ここまで辿り着けたね」
「川を挟んでお話していい」
「ここまで許してもらえる様になったね」
七夕以外の時もだ。
「一日に少しの間だけれど」
「それでもね」
「毎日お話出来る様になったわね」
「皆が僕達の幸せをお願いしてくれて」
その結果だというのだ。
「本当にね」
「そうなったね」
「皆がお願いしてくれたら」
それで、とだ。織姫は笑顔で言う。
「私達は次第にだれど」
「一年に一度しか会えない状況から」
そのことが、というのだ。
「やがてはね」
「また一緒に住める様になるわね」
「うん、皆がお願いしてくれたら」
彦星は川、天の川の向こう岸にいる織姫に答えた。
「そうなるよ」
「そうよね」
「また何時かね」
「ええ、またね」
「一緒に暮らそう」
「そして今度はね」
「離れ離れにならない様にしよう」
「二度と」
二人は無限の星の瞬きを漂わせている川を挟んで話をした、そうして二人で笑みを浮かべていた。
「一年に一度しか会えなかったのが」
「折角こうして川を挟んででも会える様になったから」
「やがてはね」
「また一緒に」
こう願うのだった、そしてその二人を見上げながら。
愛は先生にだ、こう尋ねた。二人で天体観測をしていた時にだ。先生が愛を誘って二人で先生の家のベランダから夜空を見上げているのだ。
「先生、私達がお願いしたら」
「織姫さんと彦星さんのことね」
「そうしたお二人はまた一緒に暮らせますよね」
「そうね、何時かはね」
「じゃあ私お願いします」
愛は夜空を見あげつつ先生に答えた。
「何時かまた二人が一緒に」
「ええ、暮らせる様にね」
「先生もお願いしてくれるんですか?」
「勿論よ。人の幸せをお願いすることがね」
「いいことだからですね」
「人の幸せを願うことはいいことだから」
そのことがわかったからだ、もっともそこには自分も幸せになったということもあるが。先生は愛に言うのだった。
「お願いしましょう」
「はい、じゃあ」
二人で織姫と彦星に幸あらんことを祈るのだった。二人の願いは確かに夜空の二人にも届いた。今は離れ離れになっている二人にも。
七夕さらさら 完
2014・4・29
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