第一章
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七夕さらさら
坂上愛は七夕が好きだった、それでだ。
毎年七夕の笹を飾ってお願いをしていた。クラスメイト達は愛のそのお願いを書いた短冊を見ていつも言った。
「また一杯書いてるね」
「去年もそうだったしその前も」
「愛ちゃん七夕のお願い多いね」
「一杯お願いするんだね」
「だってお願いしたらね」
愛は無邪気な顔でクラスメイト達に答えるのだった。
「それが適うのよね」
「うん、そう言われてるよ」
「けれどね」
「愛ちゃんのことはお願いしないんだね」
「他の人のことばかりじゃない」
見ればそうだ、愛の短冊を見ると。
クラスで怪我をしている子の怪我が早く治って欲しいだの何処かの戦争が終わって欲しいだの誰かと誰かが仲直りして欲しいだのだ、そういうものばかりだ。
それを見てだ、クラスメイト達はこう言うのだ。
「何で自分のことをお願いしないの?」
「そうしないの?」
「折角なのに」
「自分のことをお願い出来るのに」
「だって。私のことはね」
どうかというのだ、自分のことは。
「何時でもお願い出来るじゃない」
「何時でも?」
「何時でもなんだ」
「うん、流れ星にも出来るし」
まずはよく言われているこのことだった。
「クリスマスでも。神社でも何処でも」
「だからなんだ」
「自分のことはお願いしないんだ」
「七夕の日には」
「そうなんだ」
「うん、そうなの」
こう言うのだった。
「私七夕は他の人の為にお願いするの」
「そうなの」
「だからなんだ」
「それだけ一杯短冊に書いても」
「自分のお願いは一切書かないんだ」
「そうなんだ」
「そうなの、これからもね」
今年だけでなくだ、これからもというのだ。
「他の人のことをお願いするの」
「それじゃあね」
ここで先生も愛に尋ねた。
「若し坂上さんに好きな人が出来てもなのね」
「はい、私のことですから」
だからだとだ、愛は先生にもはっきりと答えた。
「お願いしないです」
「そうなのね」
「私のお願いは他の時にします」
「坂上さん七夕大好きよね」
「一年のうちで一番好きです」
この言葉に偽りはなかった。
「お正月やクリスマスよりも」
「それでもなのね」
「はい、それに」
「それに?」
「一杯誰かの為にお願いしたら」
勿論七夕の日に、である。
「織姫さんと彦星さんにいいことがあるんですよね」
「あれっ、そうだったかしら」
「そう聞いてますけれど」
「確かに織姫と彦星は七夕にしか会えないけれど」
よく言われていることである、何故そうなったのかは様々な物語がある。
「それでもそうだったかしら」
「そう聞いてますけれど」
「何はともあれそうなのね」
「
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