第五章
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横の間合いを詰めた、雷獣は服を脱ぎその服を彼に渡した、だがここで。
さっとだ、風狼は雷獣の服の背のところを切った、すぐにそこが裂かれた。
そしてだ、さらにだった。
雷獣の顔にさっと苦無を一閃させた。それで左頬に傷をつけた。顔は覆面で覆われていたがその覆面も切られた。
そうして切ってからだ、風狼は言った。
「血を付けさせてもらう」
「服にか」
「切って傷がない筈がなかろう」
「血が出ないこともな」
「こうしてだ」
また苦無で雷獣の左頬を一閃した、そしてその付いた血をだ。
服に塗る、闇夜の中でよく見えないが血は確かに服に付いた。
そしてだ、風狼は雷獣にこうも言った。
「顔に傷があればな」
「それでか」
「その傷から御主の元の顔はわかりにくいであろう」
「万が一また追っ手が来てもか」
「御主とはわかりにくい」
傷で顔が変わってだ。
「だからだ、そうした」
「済まぬな」
「御主はこれで死んだ」
服は貰った、そして服にも血が付いたからだ。
「そのまま何処にでも行け」
「ではな」
「二度と外に出るな」
山人のいる山から、というのだ。
「人知れず暮らすのだ」
「そうさせてもらう」
こう答えてだ、そしてだった。
雷獣はそのまま何処かへと消え去った、山の奥へと入って。風狼は彼の服を持ってそのうえで里に戻った。
そして頭領にその血の付いた切り裂かれた服を差し出して言った。
「首は手に入れられませんでしたが」
「服をじゃな」
「はい、証として」
持って来たというのだ。
「これを確かに」
「わかった」
頭領も応える、服を受け取って。
「受け取ったぞ」
「それでは」
「よく討ち取ってくれた」
抜け忍である雷獣を、というのだ。
「今回のことは」
「はい」
「しかも雷獣はな」
ここでこうも言う頭領だった。
「御主とは昔から共にいたな」
「いえ、抜け忍ですから」
風狼は冷静そのものの声で答えた。
「当然のことです」
「抜け忍には死」
「それが忍の掟ですから」
だからだというのだ。
「当然のことです」
「そう言うのだな」
「左様です」
「わかった」
頭領は彼のその言葉に短く答えた。
「では休め」
「わかりました」
風狼は頭領の言葉に応えて姿を消した、その彼が消えてからだ。
上忍達が密かに頭領に話した。その話はというと。
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