ダプニス
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中で花に囲まれながら。
花に囲まれながら彼女は泣いていた。涙がとりとめもなく流れる。もう彼女にはそれを止めることはできなかった。その場に崩れ落ち一人寂しく泣くのであった。
そして彼女は姿を消した。何処に行ってしまったのか誰にもわかりはしなかった。
彼女が姿を消して数日後ダプニスはふと一人でいることに飽きてしまった。
「そうだ」
ここでふとエケナイスのことを思い出した。そしてエケナイスがいつもいた野原に向かった。
「あれ?」
だがそこには彼女はいなかった。周りを探したが何処にもいなかった。
「あれ、いない」
そしてようやく彼女がいないことに気付いた。草や花に聞いても何も知らないという。だが彼女が最後にここにいた時のことを知っている花達が彼に教えた。
「最後に泣いていましたよ」
「泣いていたの」
「はい。何か凄く悲しそうに」
「悲しそうって。何故だろう」
ダプニスにはその理由がわからなかった。
「また会えるのに。それで彼女が何処に行ったのかは知らないんだね」
「申し訳ないですが」
「それじゃあいいよ。自分で探すから」
彼は彼女がすぐに見つかるとこの時は思っていた。
「またね。他の場所へ行ってみるよ」
「わかりました。ではお元気で」
「うん」
こうして彼はエケナイスを探しに向かった。そして野原や野山だけでなく他の色々な場所を何日もかけて歩き回った。そして彼女を探したが結局見つからなかった。
「何処に行ってしまったんだろう」
彼は彼女が見つからないことに次第に不安になってきた。
「いないなんて。一体何処に」
次第に寂しくなってきた。その寂しさを感じながら尚も探し続けた。だが結局は見つかりはしなかった。
彼女は何処にもいなかった。海の中にも孤島にもいなかった。聞いた話では天界にも冥界にもいないという。つまり彼女は彼の目の前から完全に姿を消したのであった。
「本当にいないの?」
それが次第に彼にもわかってきた。
「僕の目の前から。いなくなってしまったの?エケナイス」
名前を呼んでも返事はなかった。ついこの前まで名前を呼べばすぐに帰ってきた返事が今ではもうない。木霊だけが返るだけであった。
次第に彼にもわかってきた。寂しさが。そしてその辛さが。何処を探しても彼女はいない。何処にも。いなくなってはじめて色々なことがわかってきた。
「だからあの時泣いていたんだ」
彼はそれにも気付いた。あの時彼女が泣いたのはその別れが永遠のものに思えたからだ。別れは寂しい。そしてそれは単なる別れよりも大きなものであったのだ。
探しているうちにわかった。エケナイスは彼氏に捨てられたばかりだったのだ。そして新しい彼氏を探してい
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