第四章
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「山人になりだ」
「世に出ぬか」
「そうして生きて死ぬ」
山人としてそうするというのだ。
「そうするからな」
「だからか」
「もう御主の前には出ぬ」
決して、というのだ。
「何があろうともな」
「御主が嘘を言ったことはない」
このことは風狼も知っている、伊達に産まれた頃から共にいる訳ではない。
「本気だな」
「そうだ、町や村にもな」
「出ないな」
「絶対にな」
「人知れぬ山の中で過ごすか」
「山人としてな」
またこう言うのだった。
「そうして生きる」
「だから見逃せというのだな」
「お頭にはわしは御主に殺されたと伝えてくれ」
前を見て駆けつつだ、風狼に頼む。
「そうしてくれるか」
「そうだな」
ここまで聞いてだ、風狼は一旦言葉を止めた。その間も夜の山の木々の間を駆け続けている。
「そう言えばな」
「いいと思うが」
「証が必要だ」
風狼は雷獣に心を消した声でこのことを告げた。
「わしが御主を殺したというな」
「それがか」
「そうだ、必要だ」
それが、というのだ。
「御主の首がな」
「首か」
「若しくはだ」
こう言ってだ、不意に。
風狼はその右手に苦無を出した、その苦無でだ。
雷獣の左手を襲った、間合いは届かず傷つけられなかったが。
それでmどあ、彼はこう言うのだった。
「御主の腕か服か」
「それがか」
「どちらかを貰おう」
「腕がなくてはな」
どうかと言う雷獣だった。
「今後困る」
「では服だな」
「そうしてくれるのか」
「ただ言っておく」
ここでだ、風狼は雷獣にこうも言ってきた。
「わしが御主を騙してか」
「服ではなく、か」
「御主を不意討ちしてだ」
そうして、というのだ。
「服ではなく首を貰うかも知れんぞ」
「いや、それはない」
雷獣は風狼の今の言葉を即座に否定した。
「絶対にな」
「ないと言うのか」
「そうだ、ない」
断じてというのだ。
「御主は嘘を吐かぬ」
「そう思うからか」
「御主がそうしたことを言ったことを見たことも聞いたこともない」
嘘を、というのだ。
「だからだ」
「わしが御主の首を取らぬというのか」
「断じてな」
「服だけを取るというのじゃな」
「そうじゃ、そう見るがどうだ」
「確かにな、ではだ」
風狼は雷獣の言葉を受けた、そしてだった。
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