第四章
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そうして歳月が過ぎていった、だがここでだった。
不意にだ、彼等の潜んでいる寺にだった。ある者が来た。その者を見て文次郎達は目を丸くさせて驚いた。
「何と、貴殿は」
「生きておられたのですか」
「大坂の陣で討ち死にされたと思っていましたが」
「落ち延びておられましたか」
「うむ、何とかな」
見れば大柄な僧侶だ、又兵衛以上の。
名を三好清海入道という、彼は笑顔で文次郎達に言ってきた。
「生きておるわ、他の仲間達もな」
「何と、十勇士の方がですか」
「どの方もですか」
「何とかあの戦から逃げられたわ」
こう話すのだった、三好は。
「伊佐も猿飛もな」
「十勇士がどなたもご健在とは」
「それはまた」
「無論我等の殿もじゃ」
さらに明るい笑顔になってだ、三好は彼等にこうも言った。
「幸村様もな」
「何と、真田様は討ち死にされたのではないのですか」
「生きておられたのですか」
「あの方もですか」
「生きておられるとは」
「殿は何とかあの戦から落ち延びられたのじゃ」
笑顔でだ、三好は言うのだった。
「秀頼様をお救いしたうえでな」
「秀頼公も生きておられるとは」
「それはまた」
「そのうえで薩摩におられる」
あの国にというのだ。
「島津家に匿われておる」
「では島津家はですか」
「やがては幕府に」
「うむ、そのつもりじゃ」
島津家jは関ヶ原で徳川家に敗れそれ以来徳川に恨みを持っている。それで時が来れば兵を挙げようとしている。このことは多くの者が察している。
そしてだ、幸村と十勇士達はというのだ。秀頼と共に。
「今時を待っておる、それでじゃ」
「それで?」
「それでとは」
「今我等は密かに天下に散りあの戦で落ち延びた者を探しておってな」
「そしてですか」
「ここに来られたのですか」
「探したぞ」
こう文次郎達に言うのだった。
「後藤殿も御主達も」
「では我等もですか」
「薩摩に入れというのですな」
「そうじゃ」
まさにと答えた三好だった。
「それで後藤殿は何処におられるか」
「今は畑におられます」
文次郎が三好に答えた。
「あの方は」
「すぐにここに来て頂けるか」
「はい、今からお呼びします」
「頼む、長宗我部殿に続いてあの方も来られればな」
長宗我部盛親、彼も薩摩に入っているというのだ。あの戦で大きな働きをした彼もまた。
「心強い」
「わかりました、それでは」
文次郎も応えてだ、そのうえでだった。
彼は一旦三好の前を去り寺の畑に向かった。そしてそこで畑を耕している主に三好のことを伝えた。すると。
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