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支え合うもの
第五章
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「君達もだよ、結婚してもね」
「お互いに助け合って」
「そうしてやっていくべきですね」
「僕はそう思うよ、ではあらためてね」
 考えてくれとだ、実吉は二人に言った。だが二人はそう言われてもまだ怖かった。それで中々決心がつかなかった。
 しかしだ、その中でだった。
 ある日のことだ、俊蔵が自分のペンを探しているとだ。目の悪い彼が中々見つけられないでいると悠理がだった。
 そのペンを彼に渡してきた、そうして彼に言ってきた。
「はい、これよね」
「あっ、有り難う」
「探してたのよね」
「うん、君が見つけてくれたんだ」
「そうなの、じゃあね」
「使わせてもらうよ」
 こうして悠理が俊蔵のペンを見つけて彼に渡したのだ。目の見えない彼に代わってそうしたのである。そして。
 悠理がだ、補聴器をたまたま外していて放送が聞けずに困っていると。
 その彼女の耳元にだ、俊蔵が言ってきた。
「十時に。視察が来るってね」
「そうした放送なのね」
「うん、そうだよ」
 こう笑顔で彼女に言ったのである、
「そういうことだから」
「わかったわ、有り難うね」
 悠理は俊蔵が教えてくれて笑顔でお礼を言った、こうしたことがお互いに何度かあってだ、二人共わかったのだった。
 それでだ、ある日だった。二人だけで昼食を摂っている時にだ、俊蔵が悠理に自分から真剣な顔でこう言った。
「院長さんが仰ったことだけれど」
「結婚のことね」
「何となくだけれどわかってきた気がするよ」
「私も。だったら」
「少し前向きに考えてみようか」
「そうね、それじゃあね」
「まだ少し考えたいけれど」
 それでもだというのだ。
「前向きにね」
「そうね、考えていきましょう」
 悠理も俊蔵のその言葉に頷いた。
「一緒に」
「自信はまだないけれど」
 それでもだというのだ。
「このままやっていけるかも知れないから」
「そうよね、だから」
「二人でね」
「そうしていきましょう」
 悠理は微笑んで俊蔵のその言葉に頷いた、そしてだった。
 このやり取りから一年後だった、二人は入籍した。実吉はその二人に対して優しい微笑みでこうしたことを言った。
「おめでとう、これからはね」
「はい、これからも」
「二人で」
「うん、やっていくといいよ」
 こう言うのだった。
「助け合ってね」
「それが夫婦だから」
「私達もですね」
「そうだよ、そういうものだからね」
「だからこそですね」
「私達も」
「相手の耳になって目になってね」
 そうして助け合って、というのだ。
「やっていくんだ。幸せにね」
「そうですね、二人で」
「助け合って幸せになるべきですね」
「私達は」
「そうしていくべきですね」
「そのことを期待しているよ」
 
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