第一章
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殺し屋いじめ
非常に独特な人物だった、そもそもだ。
職業からしてまともではない、それもヤクザ屋だの裏稼業の中でもとびきりまともでない仕事を生業にしている。
殺し屋である、名前をチェーカ=西郷という。
一応アジア系らしい、顔を見ればそ思える。黒髪を短く刈っていて細く鋭い目は黒い。筋肉質で逞しい身体をしている。極めて無言な男だ。
受け持った仕事は失敗しないことで知られている、ただし要求する報酬は相当だ。
この何処かのスナイパーの様な男をだ、裏稼業の者達は色々と話していた。
「素性を探る者を殺すらしいな」
「ああ、それで何人も行方不明らしい」
「また随分怖いな」
「恐ろしい奴だな」
「本当にな」
こう話す、そして。
その他にもだった、彼については噂があった。
「後ろに人が来ると殴るらしい」
「ああ、本当に誰かに似てるな」
「機械みたいな動きだしな」
「やたら無口だからな」
「個性的ではあるな」
「それもかなりな」
そういった人物だ、だからだった。
彼の後ろに立つ者はいなかった、本当に殴られれば洒落にならないからだ。
だがだった、日本のヤクザの女房である池田美沙子が夫の修一にこんなことを笑いながら言い出したのだった。
「ねえ、チェーカ=西郷さんって殺し屋がいるのよね」
「あの人がどうしたんだ」
「いや、何でも機械みたいな人よね」
「自分のルーツを探ろうとすると殺すらしいな」
修一はこのことを妻に話した。今二人は自分達の家にいる。尚修一は日本屈指の広域暴力団の幹部である。会長直属のだ。それだけの地位にいるから西郷のことも知っているのだ。
「何でもな」
「怖い人なのね」
「かなりな、俺も会ったことがあるがな」
「あっ、そうなの」
「オーラが凄かった」
その身体から放つ気が、というのだ。
「尋常じゃなくな」
「怖いオーラ?」
「俺でもびびった」
その日本屈指の広域暴力団の大幹部である彼ですらというのだ。
「修羅場は無数に潜ってきたんだがな、これでも」
「そのあんたがなのね」
「ああ、普通の人じゃない」
裏稼業の人間達の中でもというのだ。
「あの人だけはまずい
「あんたがそう「言うなんてね」
美沙子も夫のことは知っている、若い頃から会長の舎弟、懐刀として多くの修羅場を潜り抜けてきている。その身体は傷だらけだ。
その彼がそう言う、これで西郷が普通の者ではないことがわかった。
だが、だ。美沙子はここでこうも言うのだった。
「確か人が後ろに立つと殴ってくるのよね」
「そうらしいな」
「後ろに立った人はいるの?」
「いや、いない。これがな」
「実際に殴られたい人はいないわね」
「ああ、あの人は格闘能力も高いからな」
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