第四章
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「あなた、ちょっといい?」
「な、何だ?」
「何、これ」
凄まじいオーラを放ちながらだ、夫にあるものを出して来た。それはDNAの鑑定結果だった。それを彼に見せて言うのだった。
「これどういうことかしら」
「いや、それは」
「千和子があなたの子供って出てるわね」
「ああ、それはな」
「つまり、私が誰かと浮気して千和子がその誰かの子供かって疑ってたのね」
「そ、それはまあ」
「私浮気なんかしないわよ」
断言での言葉だった。
「絶対にね」
「そ、そうだよな。麻美子ちゃんは」
「そうよ、これからもね」
「それは何よりだな」
「何があろうともね、あなたを愛してるからよ」
「それは嬉しいな」
「けれどね」
それでもだとだ、その憤怒の紅蓮に燃え上がるオーラを放ちながら言う妻だった。その炎は強くなる一方だ。
「その私を疑ってこんなことまでして」
「それはその、ちょっとな」
「私を疑ってたのね。浮気してたって」
「いや、そういうことじゃ」
「そういうことじゃない、私を疑うとか」
こう言ってだ、そしてだった。
麻美子は玄関のところで腰を抜かして固まっている夫に一歩踏み出した、そのうえで。
彼の襟首を左手でむんずと掴んだ、右手には鑑定結果を持ったままだった。後は地獄の亡者の声だけが響いた。
翌日昌也は出勤した、だが。
その顔はまるで蜂の大群に襲われた様であり痣まで多くあった、顔だけでなく身体のあちこちが痛そうだ。
その彼を見て社内の面々はひそひそと話す、何があったのかと。吉沢も驚きながら彼に対して直接問うた。
「何だ?甲子園の一塁側で巨人の応援でもしたのか?」
「馬鹿言え、俺は阪神ファンだろうが」
「そういえばそうだったな」
尚吉沢は中日ファンだ、彼もアンチ巨人だ。
「じゃあそういうのじゃないか」
「いや、DNAの鑑定結果な」
「千和子ちゃんが御前の子供だっていうあれか」
「女房が見たんだよ、ついついしまい忘れてたんだよ」
「それでか、奥さんが怒って」
「この有様だよ、昨日女房に袋叩きにされたよ」
その結果、というのだ。
「この有様だよ」
「それはまたな」
「いや、酷い目に遭ったよ。お侘に今度旅行に連れて行って何でも好きなものを三つ買わされることになったしな」
「随分ときついお仕置きだな」
「離婚されないだけましと思って言われたよ」
「まあそれはな」
そう聞くとだ、吉沢も自分の家庭のことを思い出してから言った。
「俺の方もな」
「そういうことしたらか」
「まず女房に袋だな」
「俺みたいになるよな」
「ああ、そうなるだろうな」
こう予想して言うのだった。
「殺されるかもな」
「ああ、そうだよな」
昌也もこう彼に返す。
「俺だって本当に殺され
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