第五章
[8]前話
「ファンを熱狂的にさせて」
「阪神の試合を劇的にして」
「その劇的な試合が阪神に華を与えて」
「それが余計にファンを熱狂的にさせる」
まさに相乗効果だった。
「だから阪神ファンは最高だって言われるんだな」
「他のファンよりも熱狂的で多くて」
「そういうことか」
「魔物か」
「魔物が作ってたんだな」
「魔物の力がそうさせていた」
「そういうことなのかもな」
こう話すのだった、そして。
彼等はその阪神の試合を観ていてだ、彼等もだった。
ついついだ、熱狂的になってだった。
阪神を応援していた、そして何時の間にか。
一塁側でだ、彼等は叫んでいた。
「打て！そこだ！」
「今日こそは勝てよ！」
「巨人にだけは負けるな！」
「絶対に勝てよ！」
他の阪神ファンと一緒になっていた、そうしてだった。
目の前で若虎達が憎むべき、人類にとって永遠の敵である巨人をサヨナラ勝ちで成敗してだ、思わず万歳をした。
そのうえで興奮しきった顔で甲子園を出て言うのだった。
「よかったなあ」
「ああ、勝ってな」
「しかも相手が巨人だからな」
「勝利の喜びもひとしおだな」
「くたばれジャイアンツ」
「地獄に落ちろジャイアンツ」
自然とこうしたこうした言葉も出て来た。
「何か自然とこう言ったな」
「これも魔物のせいかね」
「甲子園のな」
「とにかくな」
阪神が甲子園で勝った、このことがだった。
彼等には心から喜ばしいものに思えてだ、こう言い合うのだった。
「いや、楽しいな」
「甲子園で阪神の応援をすることはな」
「こんなに面白いとは思わなかったぜ」
「全くだな」
「こういうことなのかね」
彼等はここでまた気付いた様に言った。
「阪神ファンがどうして他のチームのファンと違うか」
「甲子園の魔物のせいか」
「そうなのかもな」
「それでか」
こう話すのだった、そして。
彼等は狂喜の中甲子園を出てだ、お互いに言い合った。
「じゃあまたな」
「ああ、またここに来てな」
「阪神応援するか」
「そうしような」
そうして魔物の力を感じようというのだ、甲子園には魔物がいる。魔物はただ勝敗のシナリオを描くだけではない。阪神の魅力のはじまりとなっているのかも知れない。
最高のファン 完
２０１４・５・１７
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