七十六 盲目の忍び
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チには取り戻してほしいとナルトは願った。
自身には許されぬ、きょうだいの仲を。イタチには……――――。
しかし結局それが仇となった。
「……これがその結果か…」
くっと口角を上げ、自嘲する。
まるで我が事のように顔を曇らせるナルトを、イタチは暫し眺めていた。やがてふっと頬を緩ませ、だしぬけに「…やはり君しかいない…」と呟く。
「ナルトくん。君に頼みがある」
唐突な発言に、ナルトは片眉をついと上げた。怪訝な眼差しに促され、イタチは緩やかに首をめぐらす。
「弟に――サスケにコレを……届けてくれないか」
肩に止まった鴉が主に応じるように、カァと短く鳴いた。その眼窩に埋め込まれた赤い双眸がくるりと動く。
「俺の眼を……『写輪眼』を、」
酷く穏やかな声音でナルトへ告げられた言葉は、やわらかな表情に反して、酷く残酷なものだった。
「俺の…――――形見として」
「断る」
一蹴。
即座に拒絶したナルトはイタチを見据えた。困ったように微笑む彼を苛立たしげに睨む。
「ふざけたことを言うな。どうしても、というなら自分で渡せ」
「ナルトくん…」
声が鋭くなるにつれ、ナルトの全身から物凄い威圧が湧き起こった。湖の水面が波打ち、ピリピリとした緊張感がイタチに突き刺さる。
ナルトの憤りを直に感じて、イタチは無意識に喉を鳴らした。仮面の男から受けた傷が激しく痛む。普通ならば気を失うところ、イタチはぐっと耐えた。
このまま何もせずとも死ぬのは変わらない。元々病魔に侵された身だ。
それならば、とイタチはナルトを真っ向から見つめた。
この際、ナルトの威光を受けた者は皆身体が竦んで動けなくなるのだが、皮肉にもイタチは傷の痛みによって正気を保っていた。
怯む身体の反面、心だけは決して折れずに。
「君にしか、頼めないんだ」
本気の声音に、ナルトは真剣な眼差しで彼を見遣った。鋭い眼光がイタチの心意を探り、そして理解した。
今この場でイタチが…――――死ぬつもりなのだと。
「やめろ、イタチ」
「俺はもう、何もみえないんだ。だからナルトくん、君が…」
「やめろ」
「弟を、サスケを…」
「よせ…ッ」
整った顔に浮かべられた微笑み。それは頓に美しく、そして儚げだった。
「――――よろしく頼むよ」
刹那、イタチの身を黒炎が包み込んだ。
予め鴉に仕込んでいた写輪眼の発動―――【天照】。
「イタチ………ッ!!」
手を伸ばす。
苛烈な炎が水上を舐め、天高く燃え上がる。黒い火柱。
地獄の業火の如き黒炎は相手を骨まで焼き尽くす。それが
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