七十六 盲目の忍び
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焦り。加えて、弟との和解により揺らいだ心情が拍車を掛ける。
そしてそれは、完全に視力を失った瞬間、やがて弾けた。
以上がイタチを反逆行為に掻き立てた心理である。
一瞬の気の緩みが彼を裏切りへと導いたのだ。
誰が彼を責められようか。
彼はただ、平和を望んだだけだった。
唯一無二の弟を守りたいだけだった。
一族か。里か。誇りか。平和か。
それとも最愛の弟か。
穏健な忍びは平和を望み、優しき兄は弟の生存を願った。
花も折らず実も取らず、などと咎められるだろうか。
二兎を追う者は一兎をも得ず、などと非難できようか。
あらゆる力を尽くし、多大の犠牲を払った彼を。
充分過ぎるほどの代償を払い、身命を捧げた彼を。
ただ彼は―――うちはイタチは『人』だった。
優秀な忍びであると同時に、弟想いの兄。
そして忍びである前に彼は…――――『人』であった。
ただ、それだけだったのだ。
「……焦らせたのは俺か…」
小声にも満たぬ声。ぽつり呟かれたその自虐的な物言いはイタチの顔を険しくさせる。
ナルトの胸中に湧き上がる自責の念をすぐさま察して、彼は静かに頭を振った。
「ナルトくん、俺は君に感謝しているよ」
「………」
「サスケとの和解、決して実現出来ぬと思っていた……ナルトくんがいなければ果たせなかった行いだ」
ナルトは黙っている。陰影に閉ざされた彼の顔は伏せられ、感情を一切読み取らせない。
しかしその顔は、影以上の深い悲しみに彩られているのだろうと、イタチは悟った。
ナルトは己の行いを悔いている。イタチとサスケの仲を取り持つべきではなかったと後悔している。
兄弟の諍いを治めた事こそがイタチの裏切りに起因するとナルト本人がひしひしと感じているからだ。
サスケと和解しなければ、イタチは気を緩めなかった。
そして今回の反逆行為にも繋がらなかっただろう。
しかしだからと言って、とイタチは口許に苦笑を湛えた。
「君が気に病む必要はない。非は俺にある」
「…イタチ、俺は……―――」
気遣うイタチの声を聞いていられず、顔を伏せたままナルトが口を開く。噛み締められた唇から洩れる途切れ途切れの言葉は、気のせいか震えていた。
「…俺はただ、お前とサスケを……見て、いられなかっただけなんだ…」
ナルトはイタチが嫌いだった。
己を見ているようで嫌いだった。
兄と弟。
相手を想うが故に、諍いが絶えぬ関係。
兄と妹。
血を分けていながら、決して交わらぬ間柄。
募る同族嫌悪はナルトを悩ませ、もてあます。
そして決断した。イタチとサスケ――彼らを引き合わせようと。
二人を思いやっての行動に見えるが、結局は自己満足。自分が出来ぬ事をせめてイタ
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