七十六 盲目の忍び
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物。以前、君はそう言ったな」
哀愁を帯びた微笑を浮かべ、粛々と語るイタチ。彼の話を俯き加減で聞いていたナルトは眉を顰めた。
イタチの裏切り行為。その原因に思い当って唇を強く噛み締める。
つい先ほど仮面の男から耳にした話。普段のイタチならば想像出来ぬ行為を起こさせたのは、他でもない自分の責任だとナルトは心を痛めた。
イタチに攻撃された仮面の男は、【天照】で身動きとれぬほどの大火傷を受けた。勿論イタチもただでは済まない。激しい戦闘により彼もまた深手を負っている。
そこで仮面の男は、イタチが『暁』を裏切ったという曲解した事実をペインに伝えたのだ。そうすればペインは『暁』を呼集し、メンバー全員にイタチを殺すよう通達する。手負いのイタチならば、どうにか亡き者に出来るだろう。
その任をナルトはわざと買って出た。他の者にイタチを殺させたくないというのもあるが、それ以上に彼の口から直接物事の発端を聞きたかったのだ。
ナルトが知る限り、うちはイタチは忍びの模範とも言えるほど慎重な男。そんな彼が『暁』の裏切り者として追われる羽目になった心境をナルトは知りたかった。
けれど対峙して解った。何故イタチが裏切ったのか。どうして早まったのか。
自らの『写輪眼』を仕込んだ口寄せ動物の鴉に、あたかも自分の眼があるように幻術を予め掛けている。
その事実を知り得た瞬間、ナルトは悟った。
今に至るまでのイタチの心理を。
あの兄弟の邂逅時以来、内心イタチは歓喜していた。
顔にこそ出さないものの、長い間仲違いだった最愛の弟の理解を得たのだ。浮かれるな、と言うほうが酷だろう。けれどそれが常に張り詰めていたイタチの緊張を緩ませてしまったのである。
犯罪組織『暁』を内部から監視し、仮面の男を見張る。スパイだとバレぬよう細心の注意を払い、虚言ばかり口にしてきた。周りを騙し、相手を欺き、自分をも偽ってきた。
偽り人と化したイタチの手に残ったのは、サスケのみ。
木ノ葉の安寧を望んで汚名を背負い、罪人として生きる道を選んだものの、その根底に在るのは弟の存在。
その一方でサスケとは一生相容れないだろうと彼は諦めの境地にあった。しかしながら思いがけぬナルトの尽力で、長らく不仲だった兄弟は再び仲の良い兄弟へと戻る。その際の心境の変化がイタチの気を緩めてしまったのである。
兄弟仲を修復した事でイタチの心に芽生えたのは淡い期待。
再び弟と仲良く過ごせる日々が訪れるのではないか。
唯一無二の兄弟として共に生きられるのではないか。
甘美な夢は、術の影響から徐々に視力が低下するにつれ、大きく膨らんでゆく。
擦れる視界に仮面の男を捉える。失明する前に、彼の正体を突き止めなければならない。
次第に見えなくなる瞳の奥で生まれる
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