七十六 盲目の忍び
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『人』は完璧な存在ではない。
どれだけ強くとも、どんなに優れていても、如何に立派であろうとも。
完全無欠には成り得ない。
最初から全てが備わっている人はいない。
生まれた瞬間全部を手にする者はいない。
あらゆる間違いと失敗を重ね、完璧を目指す。それが『人』だ。
長い年月をかけ、様々な過ちを犯し。途中で満足せずに、前へ前へ。
そうして振り返れば、背後に続く永い道のり。己の努力の軌跡。
だがそれでもまだ、完全には程遠い。
満足を覚えてしまったら、未遂のまま終わる。未完成はその実、中途半端な状態を指す。
完璧とは、一概には言えないものなのだから。
いくら他者に評価されようとも、どれほど望まれたとしても。
人間だからこそ弱みがあり、それを補う為の他者がいる。
何事も独りで完璧を求めても、物事は思う通りにはいかぬもの。
だから人は完全な人間となる為に、周囲に協力を仰ぐ。
周りの人の支えがあって、はじめて最上と呼べる道が見える。
その上で、より高みを目指すのだ。
故に、どれほど優秀な身であっても、独りでは理想通りに事は運べない。
たとえ、強い意志を持っていても。
母に特別だと称されても。
弟に完璧だと敬られても。
完全無欠な存在には成り得ない。
忍びである前に、彼もまた『人』なのだから…――――。
「『写輪眼』持ちの鴉か」
両眼を見開いた鴉が首を傾げる。反して双眸を閉ざしたイタチは片眉を吊り上げた。苦笑雑じりの感嘆の声を零す。
「流石だな。鬼鮫は気づかなかったんだが…」
賞賛の言葉にも全く顔色を変えない。泰然と構えるナルトの様子にイタチは苦笑した。
もはや己自身の力では見る事の叶わぬ瞳。記憶を遡れば、閉ざされた瞼の裏に過去の映像が描かれる。下りた幕にて上映される記憶の一片で、イタチは若き自身と共に在る彼の姿を見た。
初めてナルトと出会い、そして共に過ごした日々。
それはほんの僅かな間だったが、イタチにとっては忘れようにも忘れられぬ強烈な出来事として頭に残っている。
なかでも、自身より遥かに幼き身でありながら彼は大人だった。
姿形こそあどけない。だが無邪気な風貌からは想像もつかぬ強さ。
僅かな点をも見逃さぬ、つぶらな瞳。的を絞った的確な言葉を次々と投げ掛ける桜色の唇。
人の命を一瞬で奪う、ふくふくとした白い手。ふわふわとした金の髪が覆うまろい頭は鋭く聡明で叡智に満ちている。
そして淡々とした口調の中でも鋭利な刃物の如くイタチの胸に突き刺さったその一言は、今でも鮮明な響きを以って耳に残っている。
かつてナルトが告げた忠言をそのままに、イタチは言葉を発した。
「…焦りは禁
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