魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇5
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トの話からすれば、母親が豹変したのはその研究を始めてからだという。
(何の……いや、何を目的とした研究だ?)
どんな事でもそうだが――研究には必ず目的がある。遥か昔、ただやみくもに魔法の研究に没頭していたかつての自分にも、振り返れば確かにそれはあった。……いや、この場合は望みというべきか。母親はその研究の先に何を望んでいる?
(……何故、彼女は狂った?)
元に戻った右腕を見やり、自らに問いかける。彼女を思い出した事は、決して偶然ではない。それどころか、決して無視できない。彼女が狂った理由。そして、
(何故、今になって目覚めた?)
それについても、もう予想は立っていた。あの時揃っていた条件から考えれば、まぁ妥当なはずだ。しかし、その推論に吐き気を覚えずにはいられない。もしも、それが事実だとするなら、つまりフェイトは――
「アルフ……」
右手を握りしめ、告げる。
「フェイトの――フェイト・テスタロッサの母親の名前は何て言う?」
名前には意味がある。そう信じていた。名前とは自分が自分として存在する証――他の何者でもなく、フェイトという少女が確かにここに存在する証だ。
それが無意味であるはずがない。
「え? プレシア、だけど……。プレシア・テスタロッサ」
その名前が、静かに胸に刻まれる。この感覚は、魔物退治の時と同じだった。これから背負う事になるかもしれない、業の名前。偽善だとしても、それを記憶しておくことにはきっと意味がある。確かに存在した証として。
「次に母親に――プレシアに会いに行く時は、必ず俺を連れていけ」
「アンタを……? アタシは構わないけど、どうする気なのさ?」
希望か。それとも恐れか。アルフの表情はどちらとも取れた。
「何、大したことじゃあない」
それを見やり、にやりと笑って見せた。
「……ただ、同じ魔法使いとして、一手ご教授願おうと思ってね」
3
その日の夕方の事だった。
「ああクソッ! 何だってこう、間が悪いんだ?」
毒づきながら、フェイトの隠れ家から飛び出す。文字通りの意味だ。一応対策はしてあるから、誰かに見られたという事もないだろうが。
フェイトの好きなものでも作ってやろう。そう思って一人で買出しに出たのが失敗だった。そう。一人で出たというのが最悪だった。どうやら、その間にジュエルシードの反応があったらしい。そんな書置きが一枚残されていた。せめてアルフを連れていけば連絡も取れただろうに。いや、むしろ逆か。そうだった場合、今のフェイトなら一人で突撃しかねない。折角、最近は少しマシになっていたのに、今朝方の一件のせいでまた酷く思いつめてしまっていた。
(少しでも離れるべきじゃなかったんだ……)
異境の補助がない状況では、さすがに彼女達の検索範囲には遠く及ばな
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