暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
32.怒りの神意
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さらに冷ややかに彩斗が呟いた。
 落雷が凍結する天塚だったものに容赦なく何十という数が彼の身体めがけて降り注ぐ。
 激しい閃光と爆音がやんだところには、漆黒の流動体の姿はもうなかった。
 あとに残されたのは原型をわずかに留めている公園だけだった。
 その中で彩斗は浅葱を抱きしめたまま立ち尽くしている。
 空は再び元の夕闇の色を戻していく。
 眷獣はどうやら再び眠りについたようだ。
 絃神島の崩壊の危機はなくなった。
 それでも友妃たちは身体を動かすことが出来なかった。
 天塚は倒された。しかしそれは決して喜ばしいことではなかった。
 結局、天塚がなにをしたかったかわからない。
 たとえそれを理解しても浅葱の命はもどってくることはない。

「彩……斗……?」

 その懐かしの声に、彩斗は抱きしめている少女を見た。

「いたたたた……って、なにしてんの彩斗!?」

 彼女は彩斗に抱きしめられているのを理解して頬を紅潮させる。

「よかった……本当によかった」

 彩斗は浅葱の身体を強く抱きしめた。彼女は驚き、彩斗を突き放そうとするが強く抱きしめられているため離れることができない。

「浅葱、なのか……?」

 古城が怖ず怖ずと問いかける。
 浅葱は彩斗から離れるのを諦めて答える。

「ほかの誰に見えるってのよ? って、うわ、なんじゃこりゃ!?」

 浅葱が周囲の惨状に気づいて大声を出す。
 その声とともに彩斗も周りの光景を見た。
 倒壊した修道院の建物。原型をほぼ留めていない公園。抉れた道路。彼女が驚くのも無理はない。
 しかし、彩斗はその光景を見て嫌な汗が止まらなくなる。
 この光景をほとんど作り出したのが自分のことだと思い出し、あとで那月になにを言われるかといまから嫌になってくる。
 それでも今は浅葱が無事だったことを喜ぶことにしよう。




 修道院跡地に特区警備隊(アイランド・ガード)の大部隊が押し寄せてきたのは、それから間もなくのことだった。
 彩斗たち五人はなんとか見つかることなく無事に公園から離れることができた。折しも街は夕闇に包まれて、浅葱のボロボロの服装も彩斗の浅葱の血で染まった制服も目立たずに済みそうだ。

「本当に浅葱はなんともないのか?」

 浅葱の横顔を見つめて、古城が訊く。見たところ彼女に大きな外傷はない。修道院に行く前に料理をして包丁で切った指先の切り傷も治っているらしい。
 だが、周囲に飛び散っていたのは間違いなく浅葱のものだ。
 吸血鬼である彩斗が、彼女の血の匂いを間違えるわけがない。

「なんともないわけないでしょうが! 見てよ、これ。制服だけじゃなくてブラまで真っ二つ……って、やっぱ、今のなし! 見るな!」

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