禁断の果実編
第103話 ヘキサの迎え
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舞とペコは、商店街に来ていた。
シャッター街と化した商店街の中で、入れる店を見つけては、商品を頂く。もちろんお金は店のレジに置いて。そうして、レトルト食品や薬などを集めていた。
リュックサックやエコバッグを満杯にして、また次の店に行こうと外へ出た時だった。
「高司舞さん」
自分に呼びかけた声に、舞はついふり向く。
そこにいたのは、呉島碧沙だった。脇に大きなリボンをあしらった黒のワンピース姿。チームユニフォームでないヘキサを見るのが初めてで、舞は内心意外だった。
「ヘキサちゃん! どこ行ってたんだよ。心配したんだぞ」
ペコが真っ先にヘキサに歩み寄って、膝を折って目線の高さを合わせた。
「ごめんなさい。ペコさんには、なんだか心配をかけてばっかりですね」
「本当だよ〜。戻って来たと思ったら、またふらっといなくなるし。どこ行ってたんだ?」
「光実兄さんといっしょにいました」
空気が、初夏にも関わらず、冷え込んだ気がした。
ヘキサは、目を見開いて固まるペコから離れ、舞の前まで来た。
「高司さん。光実兄さんをたすけてください」
「ミッチ……? ミッチに何かあったの!?」
ヘキサは沈痛な色で顔を伏せた。
「貴虎兄さんが今どんな状態か、ごぞんじですよね」
思い出す。紘汰が持ち帰った、戦極ドライバーとメロンの錠前。どちらも真っ二つに裂けていた。
「そのことで今、光実兄さん、とても追いつめられてるんです。このままじゃ兄さんの心がこわれちゃう。止められるの、高司さんしかいないんです。わたしじゃ、ぜんぜん足りなかった……」
舞は戦えない。アーマードライダーではないから。紘汰たちのようにインベスを退け、人々の命を守ることはできない。
けれども、心を守れと言われたなら話は別だ。
チーム発足の本当に最初から、舞は光実と共に過ごしてきた。光実のことなら、もしかしたら紘汰より知っている。
オーバーロードと通じている光実のために駆けつけるのは、紘汰たちへの裏切りかもしれない。
だが、こうしてヘキサが一人で頼みに来るほどに、光実の精神が危ういのならば。
「――分かった」
「っ!」
「連れてって。ミッチのとこ。あたしにどこまでできるか分かんないけど」
「ありがとう……ございます」
ヘキサは今にも泣き出しそうな顔をして、深く、深く頭を下げた。
「ごめん、ペコ。紘汰たちに伝えて。ちょっとだけミッチに会いに行くからって」
「舞っ!」
ヘキサが差し出す掌に、舞は手を重ねた。
(あたしはあたしの戦いをする。だから紘汰、戒斗、ごめん)
二人の少女は手を繋ぎ合い、ユグドラシル・タワーへと歩き出した。
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