禁断の果実編
第99話 家族だから許せない
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貴虎はベッドに突いた両手を震わせた。
ようやく理解できた、あまりに理解するのが遅すぎた、弟の真意。
光実は己一人に犠牲を留めることで、貴虎たちを守ろうとしたのだ。
貴虎たちを戦いから遠ざけるために、あえて憎まれ役を買って出たのだ。
「――貴様は光実を生かして解放する気はないんだな」
恐れなど消えた。怒り。ただそれだけだ。弟を弄ぶこの怪物を、頭のてっぺんから足の爪先まで刻みたい。
過去最高速度でメロンの錠前を再び開錠し、バックルにセットし、カットした。
《 メロンアームズ 天・下・御・免 》
『弟は返してもらう!! ――ハァッ!』
貴虎は斬月に変身するなり、高くジャンプして無双セイバーでレデュエに斬りかかった。
しかしレデュエは杖槍で無双セイバーの一撃を軽々と食い止めてしまう。
杖槍が無双セイバーを巻き込み、弾き上げる。続くレデュエの一撃を、斬月はメロンディフェンダーで受けてから着地し、落ちた無双セイバーをキャッチした。
レデュエの杖から光弾が放たれた。斬月は光弾を避け、時にベッドを壁にしながら躱した。
(あのレデュエとかいうのと光実の位置が近すぎる。いつのまに。これでは遠距離攻撃ができない。いや、近接戦でも、下手をすると光実を盾にされかねない)
マスクの下の目は忙しなく動き、レデュエの隙を探す。呉島貴虎は、この程度の逆境で諦める男ではなかった。
“たすけてあげるって、お母さんに言ったの”
使命感より、義務より、今は情こそが斬月を衝き動かす。
“みつ兄さんになにかあったら、たか兄さんとヘキサで助けてあげようね。たか兄さんになにかあったら、ヘキサとみつ兄さんがたすけてあげるからっ”
墓参りの帰り道で妹がこっそり打ち明けた。合掌に込めた祈りの内容。
――初めて3人で行った母の墓参り。「呉島家之墓」と刻まれた墓石の前。
小さな光実が、もっと小さな碧沙に、合掌の仕方を大人ぶって教えていた。10代の貴虎は微笑ましく、大事な弟妹を見守っていた。
(分かってる、碧沙。俺が光実を助けてみせるよ。ここにいないお前の分も)
斬月は空のベッドからベッドへ飛び移り、レデュエが放つ光弾を避け続けた。
『ふん。飛び回ったところで、いずれ体力が尽きて終わりだ』
『それはどうか――な!』
斬月が狙っていたのは最初からレデュエではなかった。
斬月は無双セイバーのレバーを引いて――光実と繋がった装置に、照準を合わせた。
自分にとっての泣き所が光実であるように、レデュエにとっての泣き所は、ロシュオのために用意されたこの装置のはずだ。見るからに精密機械、撃てば脆く崩れ去ろう。
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