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トランシルバニアン=ラブストーリー
第五章
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かないその二組を見ながら。
「鏡だね、本当に」
「全くだ」
「ねえ」
 皆のそうした話は彼女達の耳にも入る。イレアナは楽しそうに笑いながらナディアにそのことを言うのだった。ナディアはニカエルの左手にしがみついている。イレアナはミハエルの右手だ。二人は丁度隣同士になっている。
「皆私達のこと噂してるわよ」
「そうね」
 それはナディアもわかっている。わかっていて楽しんでいるのだ。
「そんなに噂にしなくてもいいのに」
「それは無理よ」
 イレアナは笑ってナディアに告げた。
「幾ら何でもね」
「どうしてなの?」
「だって。何もかもが一緒に見えるのに」
 今の自分達の姿について言うのだった。見れば今の二人も彼氏達もその姿もまるで鏡でお互いを見ているかの様に同じに見える。これで注目されない筈がない。
「これで見るなっていうのもね」
「あら、それは違うんじゃないの?」
 けれどナディアはイレアナと全く同じ笑みで言葉を返す。
「何故なの?」
「だって。ここはトランシルバニアを」
 自分達のいる場所について言う。
「鏡に映ったみたいだといいじゃない」
「ああ、そういうことね」
 イレアナは妹が何を言いたいのかすぐに察した。それで頷く。
「鏡に映るからこそね」
「そういうこと。鏡に映らなかったら大変よ」
 吸血鬼は鏡に映らない。古来から言われていることである。そうした意味で全く鏡合わせに見える二人も彼氏達もいいのだった。トランシルバニアならではの言葉だった。
「でしょ?だから」
「わかったわ。じゃあ今のままでね」
「いいのよ。それに」
「それに?」
「どっちかが悲しい思いをしなくてよかったわ」
 告白するかどうか困っていた時の話をするのだった。
「そうなったら」
「そうだね」
「それは僕達も思うよ」
 ニカエルとミハエルもそれについて言うのだった。
「若しそうだったら」
「後味が悪いしね」
「そうよね」
 イレアナは二人の言葉に頷いた。
「やっぱり」
「後で気まずいことになっていたわ」
「僕達がここに引っ越してきたのは家の商売の為だったんだ」
「家の!?」
「うん」
 ニカエルがナディアの言葉に頷く。四人はお互い同士が誰なのかはっきりわかっていた。それは好きだからなのだが他の者には容易にはわからないことである。
「今までブカレストで観光品売っていたけれどね。今一つだったんで」
「そうだったの」
「それでここに来たんだ」
 今度はミハエルがイレアナに言う。
「そうしたら今のところ売り上げが全然違うんだ」
「ドラキュラ公の思し召しね」
 イレアナはそれを聞いてこう述べた。トランシルバニアではまさにそうした意味でも偉大な英雄だ。子孫を食べさせているのだから。
「それって」

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