第三章
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第三章
「二人同時は駄目だし」
「そうよ。二人で同じ彼氏は無理よ」
ナディアも言う。それがわかっているからこそ二人は困って悩んでいるのだ。実は二人は同じ男の人を好きになってしまったのである。だから困っているのだ。
「それはわかっているわよね」
「勿論よ」
イレアナの口が波線のようになって表情も少しいじけたものになる。
「わかっているからってのは言っているじゃない」
「そうよね。これもさっきから言っているけれど」
ナディアも言うのだった。
「私も同じだし」
「何か勝負で決める?」
ナディアは相方にこう提案してきた。
「このままじゃどうしようもないし」
「勝負って何よ」
イレアナはすぐに問い返してきた。
「何かいいのがあるの?」
「そう言われると」
首を傾げるだけであった。
「特にないのよね、これが」
「結局そうなの。何だ」
「じゃああんた何かあるの?」
今度はナディアが問い返す番であった。
「いい解決案。どっちにしろ何とかしないと駄目だし」
「ないわねえ」
実はイレアナにもそれはないのであった。
「どうしようかしら」
「かけっことかなら簡単に話が進むのに」
「かけっこねえ」
だがイレアナはその言葉にふと気付いた。
「それいいかも」
「じゃあ走る?競争で」
「ああ、そうじゃなくてね」
そうナディアに言い返す。
「別の方法思いついたんだけれど」
「別の!?」
「そう、別の」
まだあれこれと悩んでいる顔であるがそれでも述べるのであった。
「早い者勝ちで行きましょう」
「早い者勝ち」
ナディアはその言葉に目を少しパチクリとさせた。何となく何が言いたいのかわかった。
「あれ?つまり先に告白してはいと言ってもらった方が」
「そういうこと。それでどうかしら」
またイレアナは言う。
「悪い考えじゃないと思うけれど」
「そうね」
考えてみればそうだ。少なくともこれだと後腐れもないしさっぱりしていると思った。
「じゃあそれでね」
「ええ。じゃあそれで行くわよ」
とりあえずどうするかが決まってイレアナはにこりと笑うのであった。
「いいわね」
「ええ、いいわ」
ナディアもやっとにこりと笑う。こうして二人は何をするのかを決めたのであった。
まず二人はラブレターを書いた。そうして相手をある場所に呼ぶのであった。
そこは学校の校舎の裏であった。二人はそこに行く途中の場所でまた二人で話をするのであった。
「いいわね」
「ええ」
二人でまた打ち合わせになっていた。
「先にはいと言われた方が」
「そういうことでね」
実に念入りであった。とにかく真剣なのは事実だ。そうして正々堂々としていた。二人は少なくともこれで恨みっこなしと思ってい
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