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トランシルバニアン=ラブストーリー
第二章
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 そんなことを話していた。実際に彼等は幸せであった。特に双子の父親であるマスターはそうであった。しかし当の双子達はこの時思わぬ悩みを抱いていた。
 それも同時にだ。二人はそれで困った顔になっていた。
「何でよ」
「何でなのよ」
 二人の部屋は店の二階にある。家と店が一緒になっているのだ。褐色の質素な部屋である。だがその中を自分達で作ったぬいぐるみで飾られている。それで飾られた部屋の中でどうにも困った顔をして顔を見合わせて椅子の上で座っていたのであった。
「困ったっていうか」
 まずはイレアナが言う。
「どうしたものよ」
「どうしたもこうしたもないじゃない」
 ナディアが相手に言い返す。一応はイレアナが姉になっている。
「私だって困ってるのに」
「それは私もよ」
 二人は同じ声で言い合う。姿を見ずに話を聞くと独り言を言っているようにしか見えない。
「まさかこんなことになるなんて」
「そうよねえ」
 イレアナはあらためて困った顔になる。首を捻って溜息をつく。
「あんたもそうよね」
「当たり前よ」
 ナディアは姉に答える。
「そうじゃなきゃこんなに困った顔になっていないでしょ」
「そうよね。わかってるつもりだけれど」
「わかっていたらどうするかよ」
 ナディアは言う。
「そうでしょ。それが肝心」
「けれどさ、ナディア」
 イレアナはあらためてナディアに言うのだった。
「正直どっちも退くつもりはないわよね」
「悪いけれど」
 ナディアの返事の声はしっかりしたものであった。それまでの煮え切らない顔とはうって変わって。
「あんたもでしょ、それは」
「ええ、そうよ」
 イレアナもまた強い声で答えてきた。
「だから困っているのよ」
「私も。同じ人だったなんて」
「何でこうなるのよ」
 二人はまた困った顔と声になって言い合う。はあ、と溜息をつく動作もそのタイミングも全く同じであった。やはり鏡合わせにしか見えはしない。
「予想していなかったし」
「困ったことねえ」
「けれどさ」
 イレアナはナディアに言葉を返す。

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