第一章
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ュラケーキ如何ですか?」
「ドラキュラ公が大好きだった血のジュースですよ」
二人は喫茶店の前でトランシルバニアの民族衣装を着て客寄せをしていた。それにしても随分不気味な名前のメニューがある。
白い髪に透き通るような肌をしていて目は青い。湖の青である。その青と髪、肌の白が幽玄な印象を与えてくれる。二人共髪を長く伸ばしておりそれが実によく似合っている。それを見ていると何故か彼女達まで吸血鬼のように見えるのはおそらくここがトランシルバニアだからであろう。ここがトランシルバニアではなくアイルランドか何処かであれば妖精に見える。そうした雰囲気の二人であった。
「ドラキュラ公の好物!?」
「そうですよ」
いぶかしむ客ににこりと笑って二人同時に答える。見ればその表情も顔立ちもそっくりである。僅かに違うとわかるのは一人の顎の右に、もう一人の左にそれぞれ黒子があるということである。それ以外では鏡に映るのと全く同じ感じであった。もっとも黒子の位置から実際にそれをやっても鏡合わせの二人にしか思えはしないのであるが。
「如何ですか」
「美味しいですよ」
「いや、美味しいって言われても」
客はまだかなり引いていた。
「血なんだよね」
「そうです」
一人がにこりと笑って述べる。
「それが何か」
「いや、血を飲むっていうのも」
完全に真に受けている。どうもかなり単純な人間らしい。
「困るな。っていうか美味しいの?」
「ここには美味しいものしかないですよ」
「そうですよ」
二人は揃って言ってきた。
「ですからどうぞ」
「ドラキュラ公の生き血もありますし」
「生き血・・・・・・」
それを聞いてさらに引く客であった。
「よく警察が来ないな」
「まあまあ」
「興味がおありでしたら」
見事なタイミングで店の扉を指し示してみせる。片方が右手、もう片方が左手で。それを見ているとやはり鏡そのものに見える。
「どうぞ中へ」
「損はさせませんよ」
「うん、それじゃあ」
何だかんだで店の中に入る客であった。
「行くよ。それでいいんだよね」
「はい、どうぞ」
「ようこそ公爵様の屋敷へ」
「何か怖いな」
公爵の屋敷と言われるとついついそう思ってしまうのだった。
「何かされそうで」
「それも中に入ってからの」
「お楽しみです」
「わかったよ」
姉妹に言われてまた中に進む。
「それじゃあね」
「はい」
「お一人様来られました」
店の中に入って注文すると。ケーキは単なる赤い苺のケーキでありジュースはトマトジュースであった。だが味は抜群によかった。生き血はワインだった。これもかなりのものだった。
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