第4話「タダでもらった物ほど後が怖い」
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
った。足音がしなくなると、双葉は天井に視線を戻す。
闇夜の訪問者は好き勝手に過ごしていった。いきなり押し倒して、無理矢理口づけして、身体を縛って、毒入りのおカユを飲ませて――
――口移しだったのになぜアイツは無事だったんだ?
だがその疑問はすぐに解けた。あの後、高杉はやたらキセルを何度も咥えていた。
恐らくキセルに解毒薬でも塗っていたのだろう。
――全く、どこが『会いたくなっただけ』だ……。
ふと、そっと唇に手をかざして、あの時を思い出す。
意識がもうろうとする中で聞こえたのは、兄の声だった。
答えたかったが、力が入らなくて声も出なくて。
そして、なにもできないまま闇の中へ堕ちた。
けれど、そのあと唇に温もりを感じて、双葉は闇から目覚めた。
それは今の高杉とはちがう、優しい温もり。
いいや、かつての高杉と同じ温もりだった。
――あの二人は似てる。
『俺は今も昔も護りたいモンは何一つ変わっちゃいねェよ』
『俺はあの頃と何一つ変わっちゃいねぇよ。……俺が護りたかったモンは何一つ変わってねェ』
――似てるから私は……
「好きなのか?」
だとしたら何て傲慢で身勝手な話だろうと、双葉は己を軽蔑する。
結局それは重ねて見ているだけ。兄者に高杉を重ねて、高杉に兄者を重ねて。
本当の二人の姿を見ていない。それで『好き』と言えるのか疑わしい。
だがこの想いに偽りはない。それは本物だと言い切れる。
信憑性がないと言われればそれまでだが、この想いだけは失いたくない。
――それに……
『ならおまえの帰る場所はどこだ。なぜココにいる?』
『自分がいてェ場所がテメェんちだ。居てェんなら好きなだけいろ』
――ココが私の居場所なら……私はずっとココに……
『待ってるぜ』
「!」
去り際に耳元で囁かれた高杉の言葉。
その一言で安堵の余韻が忽然と消える。代わりに、彼と過ごした記憶が一気に心に蘇る。
『『獣』は止められねェよ。血に飢えてるなら尚更な』
高杉の強引な口づけ。
最初は抵抗した。
でも、次第に受け入れてる自分がいた。
口づけを。高杉を。『獣』を。
――『獣』を求めてる……?
“ドクンッ”
高杉は知っている。
この『獣』が暴れるのを、最も望んでいるのが誰なのか。
知っているからこそ、「待つ」と言ったのだろう。
「……ぅ……」
――止められないのか、本当に。……もう少し。もう少しだけ待ってくれ。
自身に言い聞かせるように胸を押さえ、双葉は心の中で呟く。
そして。
また眠りについた。
=終=?
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ