第4話「タダでもらった物ほど後が怖い」
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「兄者……」
「まだ喋んな。しびれてくるぞ」
銀時の声からは静かな怒りが感じられる。
苛立っているのだろうか。
「どうして……依頼は……」
「行っても誰も来ねーわ、代わりに汚ねェ奴らがゾロゾロ出てくるわ。変だと思って帰ってみりゃ――」
そこで銀時はためらうように口を閉じる。双葉もそれ以上聞かなかった。
そしてお互い何も話さないまま、しばしの沈黙が流れた。
「悪かったな。一人にさせちまって」
「……いいさ。自分で望んだことだ。兄者は悪くない。自業自得だ」
弱々しい双葉の態度に銀時は言葉を失ってしまう。
そう、普段の双葉は強そうに見栄を張っているにすぎなかった。
その裏でいつ壊れるかわからないモノを抱えて過ごしていたのだ。
兄として分かっていた。
いいや、『つもり』だった
「天人と駄メガネは……」
「もうすぐ帰ってくんだろ」
「そうか……」
帰ってくる。
帰る場所がある。
あの二人にも、兄者にも『家』がある。
それは自分の居場所。
「兄者。もしココがなくなったらどうする?」
唐突な妹の質問に、銀時は眉をひそめた。
だがそれに気づかないのか、双葉は質問を続ける。
「自分の、帰る場所がなくなったら……」
「帰る場所なんて、端っからねェよ。自分がいてェ場所がテメェんちだ。なくなったって、また見つけりゃいいんだよ」
銀時の言葉は心に響くモノだった。その言葉を聞くだけで不思議と安心する。
だが、それでもまだ不安は拭えない。
あの日、『帰る場所』が突然なくなった恐怖は忘れることができないから。
「……ココにいてもいいのか?」
その問いに、銀時は横たわっている双葉に近づき、ムスッとした目で覗きこむ。
すると双葉の額を拳で軽く叩いた。
“コツン”
「いたっ」
「おいおいおい。さっきの話聞いてなかったのかァ。居てェんなら好きなだけ居ろっつったろーが。つうか細けぇことネチネチこだわり過ぎなんだよ。テメェは味噌汁の味付けにうるせぇ姑婆ァか?」
「私はそんな姑婆ァではない」
「だったらなに?ネチネチうっさい奴でもいんの?んな奴がいたら俺がぶん殴ってやらぁ」
そう言って笑う銀時につられるように、双葉の口元にも薄い笑みが浮かぶ。
「……その前に私が串刺しにしてやるさ」
「ちょ、お前なァ」
眼が笑ってなくて寒気を感じたが、銀時はホッとした。
これが双葉なりの冗談だと知っていたから。
「腹減ったろ?メシ作ってくる」
銀時は立ち上がり、襖に手をかける。
「なぁ、兄者」
「ん?」
双葉に呼ばれ、襖を開きかけたまま銀時は振り返った。
「……いや、なんでもない」
そうかィ、と銀時は襖を閉じて台所へ向か
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